第6話 対面
「なんだかんだ、俺達一緒に昼飯食ったことないよなぁ」
昨日のお昼休みから1日たった今日、俺は五味と一緒に廊下を歩いていた
「まぁ、俺がいつも別で食ってたからな」
「で、俺は今そこに案内されてるの?」
「そ、結構本気で秘密にしてるところだから他の奴に話すなよ」
「そんな何回も言われなくてもわかってるよ。というか、話せる相手いないし」
「だな、可哀想な嫌われ者」
今日俺が五味を案内するにあたって、俺はこいつに対して場所について話さないことと、この昼休みにあったことについては他言無用であるという事を念押しで伝えてある
やっぱり、ある程度信頼しているとはいえ、この昼休みの事を他人に話されるとその後が本当に面倒なことになるので口止めはしておくに限る
「ほい、ついたぞ」
「おぉーって、ここ何の教室?」
「数学準備室、先生曰くこの学校の準備室は理科以外の教科はただの物置になってるらしい」
「へぇ、まぁ俺も今日連れてこられるまでこの教室の存在知らなかったしな」
「しかもここは教室からも食堂からも自動販売機からも離れてるから昼休みはマジで人が来ないんだよ」
「ボッチ飯にはもってこいだな」
そういえば、こいつに他に人がいることを伝えてなかったな
「あ~、一応俺以外にも二人いるんだ。伝えるの忘れてた」
「へ?この学校にお前とつながりのある人がいるのか?」
「まぁ、それについても他言無用で頼む」
「りょうかい」
そうしてドアを数学準備室のドアを開けると、いつもの二人がすでに座っていた
「え?霞が言ってたのって、本宮さんと...誰だ?」
「知らないんかい!って知ってる方がびっくりするんだけどね。私は片桐ほのかっていうんだ!よろしく!五味君!」
「あー、これはどうも。ってか、どういうつながりなんだ?本宮さんと霞はなんか霞が付きまとってるって噂があったけど、本当だったのか?」
「んなわけあるか、俺とスミ...本宮は幼馴染なんだよ」
これを伝えると、五味は一瞬叫びそうになったが、必死でこらえていた
正直叫ばれるといくら人が来ない場所だからといっても気づかれかねないので助かる
「五味君。初めまして、霞の幼馴染の本宮香澄って言います。良ければスミってよんでね。じゃないと、私か霞かわかりにくいから」
「わ、わかった。じゃあスミさんと呼ばせてもらうよ」
ほう、スミが初対面の五味にその呼び方を許すとは
それだけ五味の事を安全だと思ったのかな?
片桐の方を見てみると俺と同じで驚いたのか、視線がスミに向いていた
「ほのか、大丈夫だよ。多分この人はちゃんとしてる人だよ」
「ならいいけど」
いきなりわけのわからない話をされた五味は困惑しながら俺に尋ねる
「え?何?なんなの?これ」
「大丈夫だよ。いわゆるお眼鏡にかなうってやつさ」
「つまり、とりあえず認めてもらえたってことか?」
「そ、おめでとう。この学校に入学して初めての呼び名許可だ」
「え、まじ?」
「まじ。だから、この高校でスミって呼んでるやつ見たことないだろ?全員名字か名前呼びだ」
「確かに、他の呼び名は聞いたことないかも」
スミはほとんどの人に愛想良く接するし、実際交友関係は広いが、その分のパーソナルスペースも広い
だから、その第一段階であるスミ呼びを許している人間なんて、家族と俺の家族と片桐くらいのものだ
それくらいスミと距離を縮めるのは難しい
「じゃ、自己紹介も終わったことだし昼飯でも食べますか。腹減った」
両方ともと交流がある俺としては、暇な時間だったので、ある程度の自己紹介が済んだ今、本来の目的だった昼飯の提案をした
「それもそうだなって、俺以外もしかして全員弁当か?」
「うん?そうだよ!私は霞君に料理のアドバイス貰うために作ってきてるんだ!」
「私も朝起きて時間があるので毎日作ってるよ」
2人が答えたのを聞いて五味は少し固まる
「ちょ、ちょっと待てよ。スミさんの朝起きて時間があるからっていうのは分かるけど、片桐さんの霞にアドバイスをもらうっていうのは?」
「ん?そのままの意味だよ?霞君は私の料理の師匠なんだ」
「師匠といえるほどアドバイスはしてないけどな」
実際、俺がアドバイスをするときも基本的には大勢の人はこういう味付けが好きなんじゃないかっていう味に近づけるために調味料のアドバイスをしているくらいだ
「いやいやー、霞君のアドバイス通りに作ったらちゃんとおいしくなってるから、師匠としては十分くらいだよ!」
「そうか?それならよかった」
どうやら俺のアドバイスも捨てたもんじゃなかったらしい
「ってそうじゃなくて!霞!お前、自分で弁当作ってるのか!?というか、料理できたのか!?」
「まぁ、人並み程度には?」
実際、俺自身が面倒くさがりなのもあって時間がかかる料理や手の込んだ料理なんかはほとんど作らない。得意料理も焼き飯とナポリタンって答えられるくらいに簡単に作れるものを好んで作ってる
「まじかよ...」
「人並みっていうけど、私も料理の先生は霞だよ?」
食べ始めれる準備を終えたスミが何の気なしに五味に伝える
「え...」
「というか、今でも多分霞の方が料理上手だよ?」
「は...」
五味は絶句して、置物かと思うほど動かなくなった
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