第4話 秘密の場所
「っと終わったー!」
昼休みを迎えるチャイムが鳴ると五味が重労働を終えたようなテンションで叫ぶ
「じゃ、俺昼飯食ってくるから」
お腹が空いている俺はすぐにでも席を離れようと思うが
「そういえば霞っていつもどこで昼飯食べてるんだ?」
この学校の中で中々呼ばれることのない名前を呼ばれると少しむず痒い感覚に襲われる
「え、なんで?」
「いや、いつも昼休みになったらどこかに行くけど、学食に行っても見たことないし、たまには一緒に食べようかと思って」
「悪いが、場所については秘密だ。明日なら一緒に食べれるはずだから、詮索しない方がいいぞ」
「了解。じゃ、明日は一緒に食べるか」
それだけ話すと、今度こそ教室を後にする
それからしばらく廊下を歩き、人気がなくなる場所で教室に入る、すると、
「ほら、霞君ちゃんと来たじゃん。私の言ったとおりでしょ?」
「うん。色々聞いてくれてありがとう」
教室の中にいた二人の女子生徒が俺の姿を見て何かを言っていた
ちなみに、片方は今朝あったばかりのスミこと香澄で、もう片方は同じ中学から来ている
「何の話をしてたんだ?」
会話の内容から察するに俺に関することを言っていたようだが、皆目見当もつかないので聞いてみる
「いやね、今朝の出来事が学校で話題になってたでしょ?それで、霞君が愛想をつかしてスミから離れるんじゃないかって、この子が心配しちゃってて」
「なんだ、そんなことか。こんなこと今更だろ?何を心配してんだよ、スミ」
「だって、いくら言われなれていたとしても傷は蓄積されてるだろうし、糸が切れたらほんとに霞がいなくなりそうなんだもん」
「って感じでずっと不安にしてるから、私が霞君はスミから離さない限りいなくならないよって言ってるんだけど今回は本当に心配してたみたいで」
片桐はスミと中学時代からの親友なので、スミも片桐のいう事は信頼しているのだが、今朝の出来事がきっかけで学校内での俺の立場がもっと悪くなると思ったスミが不安に駆られていたようだ
「あのなぁ、スミ。俺はお前ほどじゃないが、ちゃんと友達もいるし、俺に対して暴言を言ってきている奴らがお前の立場を心配して言ってきているってわかってるから何も言い返さないんだぞ?」
「ほんとに?」
「当り前だ、もし俺を虐めようとするようなら俺だって全力で抵抗するぞ?」
「ちょっと、霞君の全力抵抗とか見たくないから止めてよね」
「冗談だよ。けど、本気で嫌だと思ったらしっかりし返すつもりではいるぞ」
「霞がそういうなら大丈夫かな。うん、少し落ち着いた」
「よし、じゃあさっさとご飯食べようぜ、腹減った」
「だね、私もお腹空いたよ」
俺の空腹宣言に片桐も同意すると片桐が自分の弁当を取り出し始める
「あ、そうだ。霞君、今日も私の料理にアドバイス貰ってもいい?」
「何回も言ってるけど、俺はアドバイスを上げれるほど料理は極めてないぞ。聞くならスミに...あー」
「そうなのよね、スミは料理はおいしいんだけど、感覚派すぎて説明されてもわからないのよね」
「むー、私だってやろうと思えばできるもん!」
「なら、今日の料理のレシピを教えてくれ。今後の参考にするから」
「えっとねー、今日はピーマンの肉詰めがおいしくできたんだけど、酒をいつもよりドバっと入れてみたら少しおいしくなったんだよね」
「ふむ、いつもどれくらい酒はいれてるんだ?」
「んーっと、こうチロロロって感じ?」
「なるほど、良くわかる説明だ」
ほんと、こいつの説明力のなさが良くわかる説明だった
スミはなんでも出来るが、ほとんど考えずにやっているので人にそれを教えることが出来ないのだ。これが完璧少女の持つ唯一の欠点だ
勉強においても、やりかた聞いてもなんとなく?とか、適当に?とかしか言わないので、いつからか俺はスミに勉強を聞くのを止めた
「けど不思議よねーそれでもスミの作った料理でおいしくないものが出てきたことないんだもの」
「ほんっと、理不尽の塊だよな」
「そんなことないもん!私にだって苦手なことくらいあるよ!」
「人に教えることだろ?」
「そうじゃなくて!」
こんな感じで適当に雑談をしながらお昼ご飯を食べる
これが、高校生活が始まってからの俺達の日常だった
というのも、事の発端はスミがストレスを抱えすぎて高校生活が始まってすぐのころ、大体3か月前に体調を崩したことがあった
それを見かねた片桐が、お昼休みだけ互いに信頼している人だけを集めてお昼ご飯を食べようと提案したことから、この日常は始まった
まぁ、ストレスの原因は俺に対する悪口を聞いていたことと、自分の周りにいる人たちが純粋にスミの事を気遣って言っているという事に気づいて、注意したくてもしきれない自分の感情が主になっていたわけだが、そのストレスを少しでも軽減するため
そして、少なからずダメージを受けていると判断した片桐とスミが俺のメンタル状況を確認するためにこの時間が設定されている
ついでに、そんな理由で教室を借りることは出来ないので、俺達は学生には内緒で文芸サークルを立ち上げ、その活動拠点としてこの教室を開放している
学生には内緒で、というのは、スミが在籍しているという事が周囲にばれてしまうと、入会しようとする生徒が増え、トラブルを呼ぶことになるからだ。まぁ、俺とスミが関わっているというのがばれるのも問題だが
だからこそ、俺も五味にすらこのサークルの存在は知らせていない
っと、五味で思い出した
「そういえば相談なんだが、明日の昼休みは俺は別で食べてもいいか?」
俺がそういった瞬間、スミの顔が絶望にそまった
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