第3話 霞の立場
どうして俺が「カス」という蔑称に対して何も言わなかったのか
俺に対しての評価に対して俺自身も同意する部分があったからだ
高校に入ってからの俺の蔑称は、本宮香澄という少女と本宮霞という少年を比べたときに、方や完璧な少女なのに対して、方やなんの特徴もないただの凡人だという事に気づかれたことから、少女を「カスミ」として認め、少年は「カスミ」として認められなかった結果なのだ
「カスミ」として認められない人間に対して、名字も名前も同じ人がいる状態でどちらで呼んでも「カスミ」となってしまう
だから、「カスミ」と認めないための名前、「カス」という名前が付けられた
それに、俺とスミは高校に入ってからも一緒に行動していることも多かった。だからこそ、比較し、呼び名を分ける必要があった
人間関係を構成するうえで完璧少女と平凡男子のどちらとより深くかかわりを持ちたいかといえば、明らかに前者だろう
「やぁ、今日も随分と冷たい視線に囲まれてるね、冷たすぎてこの教室の冷房代わりになれそうじゃないか」
教室について、自分の席でぼーっと今の俺の状況について考えていると、隣から嫌味ったらしい言葉をかけられた
「うるせぇ、お前も大して変わらないだろう
俺の隣の席にいるこの男子は、
この学校に俺がいなかったら、間違いなく学校内での一番の話題の人物であり、一番の嫌われ者になっていただろう奴だ
というのも、こいつは学年1といってもいいほどの整った容姿は持っているのだが、いかんせん性格が悪かったし、口が悪い
こいつが嫌われるきっかけになったストーリーとして、「絶望の告白式」というものがある
高校入学当初、こいつの容姿に惹かれた女子生徒が学校の校庭で告白をした
その時は昼休みで、校庭で昼ご飯を食べようとする生徒がいる状態の告白だったので、ある種の公開告白になっていた
しかし
「え、君みたいな他人の事も考えられないようなブスとなんで付き合うと思ったの?」
と一言を言ったことで、校庭の時間が5秒は止まっていた
そして、振られた少女はギャン泣きしながら校庭から走り去っていた
それから五味は容姿は整っているが、性格が終わっているとして、ゴミというあだ名をつけられ、学校の生徒、特に女子から嫌われる結果となった
ちなみに、驚くことに俺がこの学校でカスと呼ばれる前の出来事である
「まぁね、この視線のおかげでこの教室の電気代は安く済んでると思うと、貢献してる気になれるよね」
「俺ら以外の奴は依然暑いままだから、大して変わらんだろ」
「それもそうか」
今は7月半ばで気温も高くなっているので教室の中でも少し熱く感じる
「おい見ろよwあそこだけ空気がよどんでんなw」
「それなwしかもあそこからホコリの匂いがしてくるしw」
大変不快な会話をしているのは、この教室でのカーストトップのグループだ
こいつらは、俺からしたら高校生活いろんな暴言を吐いてくる生徒を見てきたが、断トツで嫌いな奴らだ
「おいカス!お前の辛気臭ぇ雰囲気が教室に蔓延してんだよ!」
「そうだそうだ!クラスのためにも気を遣えよなーw」
この高校に来て、俺に対してカス呼びをしてくる奴らのほとんどは、スミと一緒にいることに対する怒り、というよりも俺がスミと一緒にいることでスミに悪影響が出ないようにするためのだ
いうなれば、スミの事が心配で行動している結果なのだ
だが、こいつらは違う
こいつらは自身がこの教室内で一番の影響力を持っているとし、もっとも立場が下の人間に対しては何をしてもいいという傲慢な考えからの行動だ
つまり、ただの自己満足のために他人を傷つけるのだ
「ほんとに、なんでこの教室の中にゴミカスがいるのかなぁw」
五味のゴミと霞のカスを合わせてゴミカス、一部の人間だけが使っている俺達二人を指した蔑称だ
「ほんと、この教室にゴミカスがいるせいで、香澄はこの教室に来ねぇしよ」
こいつらの口からスミの名前が呼ばれるだけで、どうしようもなく怒りがわいてくるが、それ以上に可哀想に思えてくる
スミがこの教室に来ないのは確かに俺がいるからというのもある
だが、それ以上にこのクズみたいなカーストトップがいるからという理由の方が大きい
スミは八方美人ではあるが、誰に対してもずっと愛想良くしておくことは出来ない
ただ、俺に対して暴言を吐いてくる人たちはスミを心配しているという事も理解しているので、自分への善意を弾くことが出来ないのだが、どうしてもスミの中で許せないラインというのがある
それが、無意味に人を傷つけることだ
こいつらのように自分のために他人を傷つける、それによって誰も幸せにならないような行為はスミが一番嫌いな行動だ
だからこそ、そういう奴らと関わらないために距離を取る
つまり、俺や五味に対して、ただ暴言を吐き続けるこいつらは、スミと近づきたいと思っているが、自分からスミと距離を話しているのだ
だからこそ、可哀想なのだ
「おーい、学活を始めるぞー。おい楠田に葛川、さっさと自分の席に戻れ」
ちなみに、この二つの名前がさっきまで俺達にヤイヤイ言ってきていた奴らの名前だ
「ほんと、朝から面倒な奴らだったな」
五味が疲れたようにいうが、それに加えて朝から色々あった俺の方が疲れているんだぞという意思表示も込めて、俺は長いため息で返事をした
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