第15話 ありふれた言葉

「ヴェロニカ、もうあがるの??」と、アイレスがヴェロニカの裸をまじまじと見て言った。

「暑くて、のぼせそう」と、ヴェロニカが苦情を言った。

「今日はありがと」と言って、アイレスが笑った。

「僕はもう少しつかっておくよ。ちょっとだけ、待ってて」と、アイレスが言ったのだった。

 ヴェロニカは、慌てて浴場の外に出て、タオルで体をふき、衣服を着た。そのあいだに、アイレスがあがる音が聞こえた。

 アイレスの裸を直視できなかったヴェロニカに、アイレスは、

「俺の体、どう??」と言ったのだった。

 引き締まった筋肉、男性的な体。ヴェロニカは言葉に詰まった。

「とても素敵だわ」とだけ、言って、そっぽを向いた。

 アイレスが、裸のまま、後ろから抱きしめて来た。タオルを首にかけたまま。

「今夜、君がほしい」と、アイレスが言った。

「は、はい・・・」と、ヴェロニカは、心拍数があがるのを感じながら、答えたのだった。

 アイレスのせいで、ヴェロニカの服には湯水がついてしまった。

 アイレスは腕をはなし、タオルで体をふいた。

 ヴェロニカは、近くの椅子に座っていた。

「ヴェロニカ・・・怖かった?」と、服を着たアイレスが言った。山茶花の花を1個、手に持っている。この世界リーリアの国王だ。

「怖くはないわ、」と、強情なヴェロニカが言った。

「ただ、ただ・・・」と、ヴェロニカが言葉に詰まる。

「照れたんだね」と、アイレスが優しく言った。

「ま、そんなところ!!」とヴェロニカが言った。

 二人は、廊下を歩き、アイレスの私室に戻った。

 午前2時を過ぎていた。

「今夜は君を返さない」とありふれた言葉を言って、アイレスがヴェロニカを抱いたのは、それで果たして何回目だったのであろうか・・・二人は求め合い、愛し合い続けた。

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