第14話 湯あみ

「あのね、山茶花の花を持ってきたの。城に咲いてたから」と、リーリアがかばんから、5つの山茶花の花を取り出した。

「アイレス、私、あなたの妻になりたい。けど、女神イリス様に許しを乞わないといけないわ」と、ヴェロニカ。

「ははーん、その山茶花の花を、浴槽に浮かべ、一緒に湯あみしようと思ってたんだね??ヴェロニカ」と、アイレスが言った。

「女神イリス様に頼むのなら、僕から頼んでみよう。僕ら兄弟ならできる。ディアスとなら。きっと許してくださる。だから、今夜は一緒に湯あみをしよう」と、アイレスが言った。

「安心して、絶対にさわったりしないと誓うよ」と、アイレスが後ろからヴェロニカを抱きしめた。

「アイレス・・・」と言って、二人はキスを長々としたのだった。

 アイレスの部屋を出て、アイレスに手をつないでもらって、薄暗闇の中、二人はろうそくの灯りを頼りに、廊下を進んだ。

 1分もかからず、二人は大浴槽のある部屋についた。そこは王専用の浴場なのだ。

 装飾品が綺麗だった。豪華で、厳かで。アイレスが呪文を唱え、四隅のろうそくに火をともしただけの、薄暗い浴槽で、アイレスはヴェロニカに、「入っておいで、ヴェロニカ」と言ったのだった。

 ヴェロニカは、タオルで半身を隠した状態で、薄暗い浴場に入って来た。

「俺のヴェロニカ」と言って、アイレスが手招きした。

「で、でも・・・・」と、ヴェロニカが躊躇する。

「触ったりしないから。ね???」と、アイレスが言った。

 ヴェロニカは生唾を飲み込み、アイレスのややとなりに、ざぶんと湯につかった。

 ヴェロニカは、持ってきた山茶花の花を湯に浮かべた。

 ピンクとも赤ともつかぬ鮮やかな山茶花の花が、水面に綺麗に浮かんだ。

 しばらく、無言の時間が過ぎた。ヴェロニカは、のぼせそうになったので、湯からあがり、浴槽のふちに座った。

「綺麗だね」と言って、アイレスが自身の方に流れて来た山茶花を手ですくって、眺めた。

「お土産、ありがとう、ヴェロニカ」と、アイレスが言った。

「アイレスはのぼせないの??」と、ヴェロニカが言った。

「俺は男だからね」と、アイレスが笑って言った。


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