第13話 さよならリーリア姫

 リーリアとキルティアは、周りの声を気にせず、時たま会話をしながら、料理を堪能した。

 最近流れているヴェロニカの噂話は、一部の人がしているだけだったが、着実に広まりつつあった。

 エリオットが、個室タイプのレストランを紹介したのも、そういった事情もあったからだった。

「今度、このレストラン、センディーヌも呼びましょうよ!」と、カフェからの帰り道、ヴェロニカがキルティアに言った。

「そうね、センディーヌなら来てくれるでしょう」と、キルティア。

 この世界の人たちの寿命は、約1000年であった。王族はもっと長いと言われている。


 一方、西の月の都・・・ヒスイの都で、大臣たちが話し合いをしていた。

 ヒノミヤ大臣とケン大臣の兄弟が、うーーんと考え込む。

「王には何といった」と、ケンがヒノミヤに言う。議題に、アイレス国王の情事について、国民から反論が来ている、というものが上がったのだ。

「いっそのこと、東の月の都のリーリア姫を正式の王妃にめとって、結婚してしまえばいい、という声もある中、西の月の都の国民が、リーリア姫を奪うな、と反対運動を起こしている、という報告があったからな・・・事態は重い」と、ヒノミヤ。

「こちらの国民は、わりと現・リーリア姫には親和的な人が多い。それでいいじゃないか」と、ケン大臣。

「シモンを通して、国王に進言しよう」と、二人の兄弟は言い合って、執務室へと向かった。


 その日の晩、公務が済んでいたリーリア姫・ヴェロニカは、月の使者を通して、西の月の都へ行った。

 アイレスなら待っていてくれる、と思っていた。

 案の定、アイレスは公務が終わり、くつろいでいるところだった。

 数時間前、シモンからこう言われていた。「国民から苦情が来ている。リーリア姫と正式に婚約し、王妃に迎え入れろ」と。

「アイレス」と、ヴェロニカが部屋の戸をノックした。後ろにはルーシェが来ている。

「アイレス、いるんでしょう??」と、ヴェロニカが言った。

「おはいり」と、アイレスの声がした。ヴェロニカはほっとして、ドアノブを回した。

 ルーシェは、「姫様、では外でお待ちしております」と言って、一礼してその場を去った。

「最近、僕らのことの噂がよくないね」と、アイレスが、単刀直入に切り出した。

「・・・・」

「リーリア、いや、ヴェロニカ、僕の正式な王妃にならないか」と、アイレスが言った。

「アイレス・・・・」

「シモンからそう言われてね。大臣たちが騒いでるらしい」



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