第12話 カフェにて
「姫様方、今日は楽しかったようで何よりです」と、ルーシェがにっこり笑って言った。
「帰りましょう、ルーシェ」と、ヴェロニカが微笑んで言った。
1階席の人がみな退出したところで、一行も階段を降りた。そして、ホールを抜けて劇場から出た。
時刻は13時になっていた。
「ヴェロニカ、せっかくだから、町のカフェにでも行かない?城の料理には飽きてしまったわ」と、キルティア姫。
「そうね、キルティア。この近くに、いいカフェないかしら」
「恐縮ですが、それならわたくしめがご案内できます」と、初老の、キルティア姫の従者が申し出た。
「エリオットが案内してくれるなら、安心だわ」と、キルティアが嬉しそうに言う。
オペラ座から少し歩いたところに、隠れ家のようなカフェが数軒ならんでいた。ここら辺は、オペラ座帰りの人たちで賑わうらしい。
二人は、仮面を外し、帽子を深々とかぶって顔を隠して、エリオットについて行った。
少しして、おしゃれなカフェの中へ案内された。半個室制のようだ。入口がツタや花々で覆われている。
森の中をイメージしたカフェだった。
「店長の趣味らしいです」と、エリオットが、咲き乱れる美しい花々を指さして言った。
「素敵だわ」と、ヴェロニカ。
「レストラン・森の仲間たちのレストラン、だって!」と、キルティア。
一行は席について、メニュー表を眺めた。おいしそうなランチがたくさん載ってある。
「なあ、知ってるか??リーリア姫、最近公務さぼってるらしいぞ。西の月の都の、王子様と熱愛なんだってさ!」と、心無い噂話が聞こえてきて、ヴェロニカは悲しい気持ちになった。
アイレスとの仲は、なるべく国民には秘密にしておきたかったのだが、最近、ここ数年は、民衆に散らばってしまった。
誰かに見られたに違いない、とヴェロニカたちは思っていた。
「東の月の都の人間と、西の月の都の人間は、結ばれないことが常識じゃないか!住む世界が違うんだから」と、声が聞こえる。
「リーリア姫のファンだったのに残念だな」
「まったくだ。俺は東の月の都の人間は、相容れない存在だと思ってる。リーリア姫、公務にはストイックで、仕事もよくできるとはいえ、その点だけは俺は賛成できない。なんでも、王子はリーリア姫の滅びた惑星時代の婚約者だったという話だ」
「姫様・・・・」と、ルーシェが不安そうな顔をする。
「慣れてるから、いいわ、ルーシェ、ありがとう」と、ヴェロニカは沈んだ顔で言った。
料理が運ばれてきた。どれも出来立てで、おいしそうだ。
キルティア姫も、センディーヌ姫も、東の月の都の人と結婚し、子育てをしている。それに比べて、ヴェロニカは、アイレスとの道を選んだ。成就させるには、40年後、リーリア姫の公務を終えて、西の月の都に行くのが一番だろう、アイレスは公務をやめないだろうし。
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