第9話 アイレスとディアス

二人は、惑星ティアドロップスの亡くなった、家族や仲間たちのことを思い起こしながら、しばらく手をつないで、虚空の漆黒の夜空を見ていた。

「ディアスよ、」と、アイレスが振り返らず、弟に言った。

「アニキ・・・・やっぱ気づいてたか」

「え!??ディアス、いつからそこに??」と、ヴェロニカがうろたえる。

「お前も混ぜてやろうか」と、アイレスがにやっと笑いながら言った。

「なら遠慮なく入るぜ、アニキ」と言って、ディアスが扉を開けて、ずかずかと城の空を眺められる半テラスに来た。

「ディアス、いつから・・・??」と、ヴェロニカ。

 その問いには答えず、ディアスは腕組みして、夜空を見上げた。

「ヴェロニカの両親は、ティアドロップスで、早くに亡くなってたんだったな」と、ディアスが言った。

「う、うん・・・」と、ヴェロニカ。

「きっと、この世の果てに、天国というものがあるなら、そこから君を見守ってるはずだ、」とディアスが言った。

「ディアスとアイレスのご両親もね」と、ヴェロニカが言った。

「ヴェロニカ、俺を選べ」と、ディアスが厳しい目をしてヴェロニカを見て言った。

「アニキじゃない、君にふさわしいのは。アニキはなんでも奪う。力が強すぎるんだ。剣の腕も俺の方が上だ、俺についてこい、ヴェロニカ!」とディアスが言うので、アイレスがふっと笑った。

「ヴェロニカ、弟のことは放っておいて、俺と湯あみの話、考えてもらっててもいいかな。俺は君と湯につかりたい」

「余裕だな、アニキ!!」と、ディアスが叫ぶ。

「二人とも、喧嘩しないで!!」と、アイレスとディアスの兄弟とは、年齢層が違いはしたが、一応幼馴染のヴェロニカが頼みこむ。

 その後、アイレスの呼んだ召使いが、ディアスにもお酒を持ってきた。

「どうして俺を選んでくれない・・・??常識人なのは俺だろ、ヴェロニカ・・・??」と、ディアスが落ち込んで言う。

「ヴェロニカ、今日はここまででおひらきにしようか。明日の夜、また君を待っている」と、アイレスが言った。

「アイレス・・・」アイレスの召使いに案内されて部屋をあとにしながら、ヴェロニカはそれでもアイレスの名前を告げて、出て行った。

「姫様、お戻りになられるのが早かったですね」と、ルーシェがお辞儀をして言った。

「ちょっと・・・いろいろあって、」と、ヴェロニカが俯いて言った。

「明日は、公務が入っておりませんが、キルティア姫殿下が、陛下にお会いしたいそうです」と、ルーシェが言った。

「では、明日はキルティアと、午前から過ごしましょう。きっと楽しいひとときになるわ」と、ヴェロニカが言った。




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