第8話 10人のリーリア姫

「女神様の恵みに感謝!月の恵みに感謝!!」と、月の使者たちが叫ぶ。

 10この世界からやってきた月の使者たち・・・つまり、「リーリア」姫の魔法のかかった世界が、10個あることを示す。

「そちらの世界のリーリア姫は、どんな方?うちは・・・」となどと、月の使者たちが交流する。


                 *


「今日は月の使者たちの休息日だったわね、忘れてたわ、ルーシェ」と、リーリア姫・・・すなわちヴェロニカが、ルーシェと共に、お茶を飲みながら満月を見上げて言った。

「そうでございますね、姫様」と、ルーシェが紅茶を一口すする。

「アイレスもきっとそのこと、忘れてたんだわ」と、ヴェロニカが、アイレスからの手紙のカードをもう一度眺めて言う。


『ヴェロニカへ

 暇なら、今夜もヒスイの城へお越しください アイレス』


「アイレス、明日は会えるかしら・・・・?」と、ヴェロニカが独り言をつぶやく。


                  *


 次の日の晩、(昼は、ヴェロニカの公務が忙しかった)、アイレスとヴェロニカは、ともに西の月の都の城の一室で、一緒に夜空を眺めてココアを飲んでいた。

 アイレスはお酒に手を付け始めた。ヴェロニカは、お酒は飲まない。

「うちの月の使者のマーシャから教えてもらったよ、」と、アイレスが静かにヴェロニカを見やって言った。

「10億光年はなれたとある惑星の世界リーリアのリーリア姫は、本名をジャスミンというそうだが、自分の名前にちなんだジャスミンの白い花を浴槽に浮かべて、毎日湯あみされるそうだ」

「あら、素敵ね」と、ヴェロニカ。

「君の湯あみする姿、見たことないな。ディアスではなく俺を選んでくれるなら、今度一緒に湯あみしないか」と、アイレスが言ったので、ヴェロニカはドキドキして、アイレスの方に体を寄せた。

「“リーリア姫”の任務が終わったらね。その時は、一緒に湯あみしましょ。それまでは、ダメ」と、ヴェロニカが言った。

「なんで?」と、アイレスが真剣な目で言って来たので、ヴェロニカは、顔が赤くなるような気がしたが、

「それだと、仕事に集中できなくなると思う」と、素直に答えたのだった。

 その様子を、ディアスが扉の隙間からのぞき見していた。

 アイレスに、気配を察知されているとは思っていたが、それでもアイレスは堂々と、ヴェロニカに話をしていたので、ディアスは軽い嫉妬を覚えた。

 はっとして、ディアスは再び覗き込んだとき、二人が熱いキスをしているのを見た。


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