第6話 アイレスとの情事

 ことが済むと、二人はベッドでまどろんで寝ていた。

(鍛えられた筋肉・・・男らしい吐息・・・・何もかも美しい)、と、ヴェロニカは思っていた。

 アイレスとの一夜は、いつも官能的で、それでいて美しい。エキゾチックな感じがする。

 ヴェロニカたちが、この世界リーリアに来て、すでに10年、アイレスとヴェロニカの関係は、地上の人たちにも噂が立っていた。

「俺でいいの・・・??」と、アイレスがヴィーリアの髪を触りながら言った。

「あなたの体に惚れたわ」と、ヴェロニカが言った。

「俺は、結婚した女性は自分のものにしたい。子供もたくさんほしい。それでもいい??」と、アイレスが髪にキスして言う。

「いいわ」と、ヴェロニカはやや億劫になりながら言った。

「なら、もう君を離したりしないよ・・・僕のヴェロニカ・・・」

 午後2時。二人はもう一度、熱烈に求め合った。

(まったく、姫様ときたら・・・)と、ドアの外で、ルーシェが「そろそろ帰る時間ですよ」と言いたいのを我慢して、思ったのだった。

「ではね、愛しいヴェロニカ」

 ヴェロニカが服を着る前に、後ろから抱いて、アイレスが言った。

「うん、またね、アイレス」と、ヴェロニカはその手を握り返して言った。

 コンコン、とノックの音がする。

「姫様、そろそろおいとまの時間です」と、ルーシェの声がした。

「また来るわ、アイレス」と言って、服を着たヴェロニカは、アイレスに口づけをして、部屋から出て行った。

「おい、アニキ!」と、ディアスが、アイレス以外からとなった部屋に来て言った。かなりイラついている。

「俺にヴェロニカを譲ってくれる、って言ってたじゃんか!!この嘘つき!!」と、ディアスが剣を投げる。アイレスがその剣を受け取る。

「すまんな、ディアス!だが、ヴェロニカは俺に惚れてるらしいし、俺とヴェロニカは、惑星ティアドロップスにいたときから愛し合っていた・・・すまん」と、アイレスが言って、ニヤッと笑う。

「俺と、剣で勝負しろ!!」ディアスが投げたのは木刀だった。アイレスがまたしてもニヤリと笑う。

「ヴェロニカをかけて、か??だから君は子供と言われるんだ」と、アイレスが静かに言う。

「なにぃ!??!」と、ディアス。

「お待ちしておりました、リーリア様」と、月の使者であるシャトレーゼとルーナが、巫女服を着たまま馬車のドアを開ける。

 シャトレーゼとルーナは、正しく言えば人間ではなく、精霊が人間の形を成したもの、と言われている。

 時刻は午後4時を回っていた。ルーシェとヴェロニカは、素早く月の間を走る馬車に乗り込んだ。

「姫様、王には会えましたか?」と、ルーナが、馬車の中で聞く。

「ええ、まあ・・・」と、ヴェロニカが言葉を濁す。

「ごまかしておられる」と、シャトレーゼが軽く笑う。

「アイレス王と姫様なら、きっとお似合いの夫婦になれるでしょう」と、ルーナが言った。

「あ、ありがとう・・・」と、ヴェロニカがやや照れて言う。


 一方その頃、ディアスとアイレスは、激しい剣合戦を繰り広げていた。

 勝った方が、次回ヴェロニカを抱く権利がある、というものだった。

「アニキだって、」と、ディアスが鋭い一撃を繰り出して言った。

「アニキだってむきになってる、ガキじゃんか!!」と、ディアス。

「ガキガキ言うな!」と、アイレスがディアスを吹っ飛ばす。

「どっちがガキか、そんなのはどうでもいい」と、アイレスがつかつかと歩み寄って言った。

「ヴェロニカがどちらを選ぶか、だ!!」


 ヴェロニカが東の月の都に帰宅したころ、ヴェロニカのいとこで話し相手で親友でもある、キルティアとセンディーヌもまた、家庭があるので、それぞれの部屋へと帰っていた。

 ヴェロニカは孤独感を感じ、ふうっ・・とため息をついた。

 アイレスは、あのあと、情事のあと、暇なら今夜もいらっしゃいな、とヴェロニカにこっそり手紙のカードを手渡していたのだった。

 ヴェロニカはそれを取り出して眺めた。


『ヴェロニカへ

 暇なら、今夜もヒスイの城へお越しください アイレス』


 と書かれている、シンプルなアイレスの名刺の裏に書かれたメッセージだった。


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