010

 一人用リフトを降りて三人を待った。

「待たせたな」

「よし、行こーう」

「辰巳さん待ちましょうよ」

 無事三人とも揃ってから僕たちは歩き出した。

 ゴツゴツした岩がそこらじゅうに転がっている。

 木組みでできたギリギリ階段と呼べるものを一段一段登っていくと、それは現れた。

「――綺麗…」

 青空の下に水色の楕円。

 その水色が青より青く見えた。

 それを取り囲む山々は雪が少し残っている。

 積もった雪には汚れ一つ見えず、キャンバスの書き残しのように空間が抜けて見えた。

「すげぇな!」

 辰巳さんが僕の肩を掴んで叫ぶ。

「来てよかったです」

 僕がそう言うと契美さんは僕の頭を撫でた。

「写真とろか」

「良いですねって、え?」

 契美さんは僕を引き寄せてパシャリとシャッターを閉じた。

 そして不思議なものを見るように僕を見る。

「どないしたん?」

「いや、てっきり全員で撮るものだと」

「ツーショットじゃダメなん?」

「――撮り直しましょう」

 そんなやりとりをして、結局全員揃った写真も撮って。

 割とすることはなく海老介さんがお守りを買って、あっさり帰りのリフトに乗った。

 この時、僕は明日みんなと別れることにした。

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