第44話 電動バイク

 自転車つながりで台湾の会社から電動自転車の仕事が来た。


 恐ろしい自転車だった。

 ペダルを一漕ぎするとたちまちにして時速40キロまで加速するのである。

 安物自転車のペラペラフレームにいったいどれだけの出力のモーターを載せているのやら。運転中に分解してもおかしくない話である。

 もちろん、日本国内ではこんなものを運転するのは違法である。

 日本を除くアジア圏の考え方はひどく野蛮である。基本的にユーザーのお金には興味があるが、ユーザーの命には興味がない。

 こちらが作る部分は速度表示などである。つまり自転車センサーの表示器の振りをしたただの速度計である。本当は電動バイクなのであるがそれを電動自転車と言い換えたことによる措置である。つまりこれなら免許の取得も不要だし、歩道も堂々と走ることができる。

 法律は回避するもの。これが彼らの基本思想である。


 最初は百万台売れると豪語していた台湾の会社だが、開発が進むと十万台は売れるに下方修正し、やがて一万台は売れるだろうに変わった。

 これは売れる算段が変わったわけではない。最初から一万台と見ていたのである。

 口先だけでこちらの会社を騙し、開発費を出させたというわけだ。

 中国人がやるような明確な詐欺ではないが、台湾人に取ってはこれが平常運転である。

 話を保証して始めた話ではないので詐欺ではないが、日本人にとっては実質詐欺である。

 結果この仕事は開発費は回収できず、大赤字で終わったようである。


 台湾人のしたたかさを見る思いであった。

 もっとも社会一般の常識からすれば、背景を調べもしないで大言壮語に乗る方が馬鹿なのである。

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