第42話 Gの恐怖

 パチンコ君は私と同じく死ぬほどのG嫌いである。

 その彼が引っ越すことになり、場所の選定を始めた。

「今6階に住んでいましたよね? Gは上がってきますか?」

「来る。やつらは上がって来るぞ」


 6階だと上がって来ないだろうと思って窓を開けていた時期がある。このマンションの窓には網戸が無いし、窓を開けないとやたら暑い。

 わずか三日目にもう侵入された。

 我が家でのG戦争が宣言され、あらゆる禁断の兵器が使用された。密閉度が高い部屋だ。Gはどこにも出て行かない。殺らねば殺られるのはこちらだ。

 殺虫スプレーは猫の体への影響が心配されるが、こうなれば仕方がない。

 やがて敵は殲滅され、平和が戻って来た。


「そういうわけだ」と話を締めくくる。

 パチンコ君は住む場所の近くに自分より高いビルがあってはいけないと主張する。

 Gは夜中に高い所から窓の明かり目指して滑空して来るとの話だ。

 その他にも細かい規則がいくつもあり、住居の選定は困難を極めていた。



 その昔、道路舗装の会社の人に聞いたことがある。

 家を建てたら、その家の周りを30cm幅のアスファルトで囲む形で舗装するのが良いらしい。そうするとGはその境界線を越えることができない。

 本当かどうかは知らない。でも本当だったら素敵だな。


 もしここに赤くて大きなボタンがあり、それを押せば人類は全滅するがGも全滅するというならば、躊躇わずに押す自信が、私にはある。

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