第26話 しわがれ声
歌が流れている。エヴァンゲリオン:残酷な天使のテーマである。
どこにでもある歌だが一つ違う点がある。
しわがれ声なのである。
歌手が風邪を引いてしまったが音源組込み日が近づいていたので、そのまま収録したという話だ。
ピピピピじゃないだけこのメーカーは良心的と言うべきか。
恐らく残酷な天使のテーゼしわがれ声バージョンを聞いた人はこの世に十人もいないだろう。
この頃から貯金が100万円まで溜まったので、姉へ月5万づつ返すようにした。
本来は『返す』という金ではないのだ。姉は母の介護の費用を一切払っていないのだから良くても相殺だ。だが一度決めたことを曲げたりはしない。私は強情なのだ。
首吊りロープはまだ目の隅でちろちろしている。
油断はできない。風はひと時止んだだけなのだ。
天井裏の足音がひどくなる。足音だけではなく転んで尻もちをついたらしいミシリという音もした。
水道管のウォーターハンマーの件で大家さんと話をしたときに、天井の足音がうるさいですねと訴えて、上は屋根しかないですがと返されて真実を知る。
子供たちの笑い声もときどきする。
とりあえず実害は少ないので無視した。
問題が大きくなるようなら仏部の諸尊の中の武闘派の明王様たちにお願いするという手もあるが、それはあまり使いたくない最後の手段だ。彼らは非常に高くつく。
今はもうこれ以上面倒が増えぬことを祈るのみ。
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