第22話 ガス爆弾

 K主任はガス爆弾である。

 全身から強烈なドブの臭いが常に発散されている。


 T君はガス爆弾である。

 口臭が凄まじい上に、いつも仕事中はひっきりなしにふう~ふう~とため息をつくので、物凄く臭い。

 あまりのひどさに悩んでメールでその口臭を注意してみたら、次の日からは口臭消しの強烈な匂いをふう~ふう~とばら撒いていた。これも元々の口臭と混ざってひどく臭い。


 太っちょ君は汗かきである。

 夏限定ではあるが汗がひどく臭う。そしてエアコンの前に席を取っているので部屋中に臭いがばら撒かれる。


 堪らない。いわゆるスメハラである。

 しかもこういう連中はやたらと人の風上に座りたがるので悩みの種である。


 仕事の拡張に伴い、新しく部屋が用意された。最終的にはパチスロ遊技機を多数設置するので結構広い部屋だ。

 その広い部屋の片隅に机を並べ、T君と一緒に並べられる。ここのチームの主任自体は遠く離れた反対側に机を置いて作業している。

 ・・わざとかい。

 このときは本気で会社を辞めようかと思った。それほど苦痛だったのだ。

 しかし空の貯金通帳に諭されて我慢した。

 いったいどこまで続くのか、私の地獄は。

 この地獄は一年後にT君が会社を辞めるまで続いた。


 夏になった。

 太っちょ君はエアコンの前に陣取り、ガンガンに冷風を出している。

 こちらは直接風が当たる場所ではないが、その温度設定では寒い。

 あまりに寒いので、夏にも関わらずコートを着込んでガタガタ震えながら仕事をしていた。

 暑がりのご本人はどこ吹く風である。

 今度は大寒地獄か。私は地獄巡りをさせられている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る