第2話 暴走技術者
以前の知り合いのEさんに連絡を取り仕事を貰った。
ここはマイクロソフトの認定を取っていて、マイクロソフトが出している組込み用OSであるWinCEを中心に仕事をしている。
簡単な仕事を貰って、作業環境を展開する。
・・動かない。
ハードが出して来た基板とPCをLANケーブルで繋いで動かすのだが、動作が不安定で使いものにならないのだ。
二週間ほど頑張ったがうまく動かない。
Eさんからは矢のような催促である。
結局最後には使っていたLANケーブルのカテゴリが低かった(古いバージョン)だったと知れて解決した。
マニュアルに必要なケーブルのレベルぐらい書けよ。間抜けのマイクロソフトめ。
メーカー側の技術者の不手際はこうして末端の技術者が死ぬような苦労をして払わされる。
実に理不尽だ。
しかもシステムの立ち上げにいきなりLANを持って来るこの不分明さよ。マイクロソフトは一般の人が思っているよりは遥かに遥かに技術力は低い。VisualStudioなどのオンラインマニュアルを読んでその分かりにくさに苦しんだ方は多いと思う。
あれは書いた技術者のレベルの低さを示しているものなのだ。
ミニマムスタートと言ってシスエテム立ち上げ時はもっとも少ないリソースで動くようにするのが正しい。そのため長い間UARTという通信方式が使用されてきた。これはわずかに2本の信号線で成立する古いが信用できる方式である。
これからはこんなものは要らないと言ってマイクロソフトはVSシリーズからUART通信方式のサポートを削り、その結果大混乱が起きたことがある。
UARTは多くのユーザが使い、しかもほとんどのユーザが満足していたのである。
結果としてサードパーティが支援コードを出したり、古いVSから該当するコードを切り出してきたりなど大変な騒ぎになり、反省したマイクロソフトは二年後にこれを復活させて今に至っている。
彼らはここまで馬鹿なのだ。
E氏はクソTとも面識があった。話をしてみるとクソTを普通の人間だと思っている。いかにクソTの外面が良いのか、あるいは人間というものが他人の偽装を見抜けないかの例である。
E氏の会社で顔見知りの技術者のNさんにも出会う。
この人もクソTの下で働いていた人だ。
E氏と会議をしていて、急ぎの仕事を抱えているにも関わらずクソTの所の仕事を優先していることが分かり、E氏に怒鳴られる。
「あなたに給与を払っているのはこちらですよ!」
おかしな人だった。こういった人に豊富に仕事があり、私には仕事がないのが納得いかない。やったことをことさらに喧伝しないのが悪いのだろうか?
「もう勝手に営業の人と話をしてお金にもならない仕事を引き受けるのは止めてください。これ以上そんなことをしたら給与は払いませんよ」
そうE氏に釘を刺されている。
給与制なんだ。いいな。私は滅多にそんな幸運にはありつけない。働いた分だけお金が貰えるのは有難いことなのだ。
「○○さんも良く見張っていてください」
なぜかとばっちりがこちらに来た。
数日経って、Nさんとどこかの会社のリモート営業会議に巻き込まれる。
営業とNさんが楽しくお喋りを開始する。
「ではこれを追加ということで」営業が囀るように言う。
しまったあああああ!
これか。これがN氏が勝手に仕事を受けるということか。
怒鳴りつけて止めるタイミングを失ってしまった。
お陰でこちらも仕事を完遂できなかった。E氏に申し訳が立たない。
せっかくの仕事が手の中から滑り落ちてしまった。
恨むぞ、Nよ。
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