sweet 10 蒼都くんと仲良くなるには?

 あのライブから1週間ほどが経った。

 その間にゴールデンウィークも終わり、学校も再開した平日午後8時過ぎ。誰もいない静かな1階で洗い物をしていると、階段を降りる足音が聞こえた。


 一旦手を休めてそちらを見ると、降りてきたのはお風呂セットを持った壱世くん。


「あ、清水さんありがとう」


 こちらに気づいた壱世くんが、わざわざ立ち止まってお礼を言ってくれる。


「いえ!それが私の仕事ですからっ!」


 任せて!というように胸をポンと拳で叩く。

 すると壱世くんは優しそうな笑みを浮かべた後、口を開いた。


「そうだ。清水さん、ここでの生活はもう慣れた?」


 胸を叩いたことによって泡で汚れてしまった服を払う。


「はい! みなさん良くしてくれて……」


 と言いかけ、私はその"言葉"に引っ掛かりを覚えた。


 ……それはたぶん、蒼都くんのこと。

 初めてここへ来たあの日以来、蒼都くんとはまともな会話をしていない。

 というか、一言も話していない気が……。


「何か不安なこととか、あったら言ってね?」

「はいっ。ありがとうございます!」


 壱世くん優しい……! 優しすぎて、な、なみだが。


「……ね、俺にだけ敬語なの? 同い年だし、別にタメでもいいんだけどなあ」


 いたずらっぽい笑顔を浮かべながら私をちらりと横目で見てくる。

 おお、さすがアイドルっ。破壊力がすごい……!


「……わかった! ありがとう!」


 私は言い直すように、もう一度お礼をした。



 ♡――――♡――――♡――――♡――――♡



 洗い物を終え、私は自分の部屋に戻っていた。

 そうだ、明日の朝食を考える前に……っと。


「えーっと、宮畑蒼都、宮畑蒼都……」


 ちょっと気になったから……と検索サイトで調べてみると、すぐに出てきた。

 蒼都くんの画像が二、三枚ほど表示される。


 でも……あれ?

 私は、そのうちの一枚に違和感を覚えた。


 他は今の蒼都くんの姿なのに、それだけ妙に幼かったのだ。

 中学生よりももっと小さい、小学校低学年くらいの。



 すぐ下に短い紹介文があったので、それを読んでみる。


『宮畑蒼都:宮畑蒼都は、日本のアイドル、歌手、俳優。アイドル活動を開始。男性アイドルグループ・sweetballのメンバー。メロディースカイ所属。元子役であり、子役時代はstrawberry chocolateに所属していた。事務所退所後、アイドル活動を開始』


 元子役……元子役!?

 じゃあさっきの写真は、そのときのってこと?


 な、なるほど……だからあのとき、蒼都くんは"オーラが強い"って感じたんだ。

 子役からアイドルになるのって、めずらしいことじゃないのかな。



 それにしても、う〜ん、どうにか仲良くなれる方法はないのかな……って、いやいや、私はみんなと仲良くなるためにここにきたわけじゃないし!

 でも、3ヵ月間蒼都くんとだけずっと話せないのは、現実的じゃない……みたいなの、類くんのときも思ったような気がするけど? あれ?


 私は検索サイトを閉じながら、そんなことを考えていた。

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