耳をすます僕
卯月二一
耳をすます僕
声。
きっと毎日さまざまな「声」を皆さんは耳にしながら生活されてることだろう。喉の奥にある「声帯」、これは左右に一枚ずつあるらしく、こいつが振動することで音が作り出される。肺から吐き出された空気がこの声帯を通ってあの僕にとっては不思議な、ときに僕を苦しめ、ときに僕を癒やす「声」になる。
ひとの言葉はたいていこの声にのって僕のもとに届けられる。無遠慮でこちらの有しているはずの拒否権なんておかまいなく、僕の脳みその中に音声言語情報のカタチで、ずがずかと土足で入り込んでくる。自分好みの女性がヒールのまま入ってきてくれるのは大歓迎だ。だが、むさくるしいオッサンは勘弁してほしい。ほんと萎える。
容姿端麗って言葉は女性の外見のいいことを表すことばで、このご時世うるさい方も多いからかあまり聞かない。男性は眉目秀麗だったな。ルッキズムって言葉も定着してきているようだけど、たしかに人の価値を外見だけで測るのはよろしくない。それが差別的だと言われても仕方のないこと。だけど仲間内でのくだらない会話については大目に見てほしいというのが本音。
男同士で盛り上がると、顔も重要なんだけど(女性もさほど違いないでしょ?)。胸だ尻だ、いや脚だっていう話題はいつの時代も変わらなく多いはず(知らんけど)。特殊な性癖をもつフェティストが張り切りだすのはその次の段階。鎖骨やらうなじやらの身体のパーツもの、メガネや下着がどうだとかの服装やアイテムものがいつも登場する。そうなんだけどね……。このはじめに書いた「声」ってのが顔やおっぱいやお尻に優先する僕の主張は、仲間内の男の中では言うほど賛同を得ない(そんなに少なくないはずなんだけど)。
僕の場合は、「声」だけじゃなくてその「話し方」(ペースとか息遣いとか間のとり方なんてのも含む)も重要なので、かなり要件を満たすのは難しい。「声」というのはその人がこの世におぎゃあと生まれてから何万回、何百万回と発せられてきたもので、言葉のような意味をのせないものも含むととんでもない数になるはずだ。その声や話し方を聞いて、その人がどんな性格なのか、どんな人生を過ごしてきたのかを妄想するのが好きなのである。
ほんとに声がステキな女の子って。僕は音速で恋に落ちることができる。
だからみんながくだらないSNSやニュースの話題に大きな声をあげてる中、天使の声を求めて僕はいつも耳をすましているのです。
了
耳をすます僕 卯月二一 @uduki21uduki
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