第9話 ケイムス王国
平和な昼下がり、小雨が窓に打ち付けられていた。レインは自宅でレラが届けてくれた新聞を読んでいた。
記事にはラーデン帝国がその領土をさらに広げていることが書かれていた。他国に侵攻するペースが早まっているのだ。
「どこもかしこも戦争戦争って、嫌になるね」
レインは平和が一番だと考えていた。そのため他の神たちが積極的に戦争を仕掛けて遊んでいるのが、信じられなかった。
「ねぇ、おじさんの番だよ!」
当然のようにレインの家で休憩をしているレラは、新聞を読んでいるレインと、駒取りのボードゲームをしていた。
レインは相変わらずレラにボコボコにされていた。レインは適当に駒を動かした。そして新聞の続きを読み出した。
記事にはラーデン帝国がケイムス王国を目指して領土を広げているのでは、という予測が立てられていた。
「おいおい、本当か?」
レインはその予測を見て心配になった。ラーデン帝国が目指しているケイムス王国にはもう一人の神である、シュネーがいるのだ。
ラーデン帝国とケイムス王国はどちらも大国であり、軍事力は互角だった。さらに両国には神の加護もある。
「これはデカい戦争になりそうだな」
またケイムス王国にいる神のシュネーは、神の中でも一番の策略家だった。圧倒的な力を持つラーデン帝国か、策略のケイムス王国か。
この二つの国の間で起こりそうな戦争に、レインは戦々恐々としていた。
※
ケイムス王国では王と大臣、将軍による会議が開かれていた。議題はどの国に攻めるかというものだった。ケイムス王国もまた領土を広げようとしているのだった。
ケイムス王国はルデール王国という国を欲しがっていた。ルデール王国は大きな運河が流れており、交通と貿易の要衝なのだ。
またルデール王国はラーデン帝国とケイムス王国の緩衝国でもあった。二つの大国に挟まれたルデール王国は、両国から侵略の手を伸ばされていた。
先にルデール王国を手に入れた国が、運河を使うことが出来て、行軍が楽になって戦いが有利になるのだ。
そのためケイムス王国はラーデン帝国との戦争に備えて、何としてもルデール王国を手に入れようとしていた。
しかしそれはラーデン帝国も同じ考えであった。ソルが率いるラーデン帝国は現在ルデール王国のすぐ近くまで軍を配備していた。
このためルデール王国ではどちらの国からも侵略を受けている状況なのだ。このルデール王国がどちらの国の味方になるかで、戦争の勝敗を左右されようとしていた。
ケイムス王国はルデール王国に自分たちの国に協力したときの利を説いた。属国として独自の統治を認めて、また勝った暁には莫大な援助をすると言ったのだ。
一方でラーデン帝国はルデール王国に対して、武力による脅しを行った。もしラーデン帝国に従わないのであれば、民もろとも血の海に浮かべると言うのだ。ラーデン帝国にはそれを行えるほどの武力があった。
ルデール王国は板挟みになっていた。属国としての統治か、民の安全か。ルデール王国は二択を迫られていた。
※
ケイムス王国の要人による会議は一旦終わりを迎えた。そして会議を終えた王は城の奥にある書斎に向かった。
「入ってよろしいですかな?」
王は扉をノックして、許可を取った。
「あぁ、入っていいぞ」
許可を得た王は書斎に入った。そこには本の山が築かれており、その中心に一人の女性が座っていた。
その女性は、新雪のように美しい白い髪と肌をしていた。その人物はこの国を影から支える冷気の神、シュネーだった。
「シュネー様、此度の戦について意見を頂戴したく参りました」
ケイムス王国の王はシュネーに意見を仰いだ。
「まさかラーデン帝国が攻めてくるとはね」
シュネーはラーデン帝国のソルとの戦争を見据えていた。
「兵の質では向こうには劣るだろう。ならば、数と地の利で優勢に事を運ぼうじゃないか」
シュネーは自身の国を客観視出来ていた。軍事力ではラーデン帝国が頭一つ抜けているため、それ相応の対策が必要だと考えたのだ。
「やはり肝はルデール王国だな。何としても手に入れるんだ。そのためならいくら掛かっても構わない」
「御意」
シュネーはソルとの戦争に勝つために、何としてルデール王国を手に入れようとした。
雨の神は平穏に暮らしたい 詠人不知 @falilv4121
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