第2話 カミカゼ
この世界には複数の神の如き存在がいる。神たちはそれぞれが守護する国を作った。それは何千年も前から行われていた。
神たちは自身の能力を使い、住みやすい土地を作った。それは神が住みやすいのではなく、人が住みやすい土地だった。
神たちは天候を操る能力を持っていた。それぞれが太陽や風、雨、冷気などの力があった。神たちはそれぞれ領土を決めて、その土地に住み着いた。
そして自身の能力を使って、その土地を改良した。
風が吹かない海に面した土地に住み着いた神は、そこに風を吹かせた。するとそこは風の力で船が発展していった。
灼熱の土地に住み着いた神は、そこに冷気をもたらした。熱が緩和されたその土地は人が住むようになっていった。
陽射しが差さない薄暗い土地に住みついた神は、そこに太陽の光をもたらした。日の恵みを受けた人々は活発になり、農業が発展した。
このように神たちは住み着いた土地に恩恵をもたらしていた。住みやすくなった土地には人が増えていき、そこには村が出来て、村は町に、町は都市に、都市は国になっていった。
こうして自らの力で国を栄えさせた神たちは、裏で国を操っていた。
神たちがこうまでして国を作った理由、それは誰が優れているかというゲームをするためだった。
神たちは当時、チェスのような駒を取るゲームにハマっていた。しかしそれに飽きた神たちは、それを盤上ではなく実際の世界でしようとしているのだ。
国を興し兵力を高めて、それを戦わせることで、誰が一番上手く発展させられたかを競っているのだ。
そのためこの神たちが治める国は常に戦争状態にあった。そしてその戦火はレインの住む国に広がろうとしていた。
※
海に面しているゲルチェ王国で、一人の将軍が玉座の間で王に戦況を報告していた。
「報告いたします。このたび、かねてより攻めていた北方の諸国を無事制圧いたしました」
「素晴らしい! これで周辺の海域は我々のものとなった」
「その通りでございます。この勝利は王の指示なくしては勝ち取れなかったものです!」
「良くやった将軍。艦隊の指揮、まことに見事であった!」
「もったいない御言葉です」
ゲルチェ王国は風に恵まれた国だった。ゲルチェ王国はその恵まれた風を操ることで、無敵の艦隊を実現していたのだ。
ゲルチェ王国には風を操る魔法使いがたくさんおり、その魔法使いが風で船を操ることで海戦を有利に運んでいるのだ。
そして今回の戦争でも王国の艦隊は見事に海戦を制し、北方の諸国を制圧したのだった。王はその報告に機嫌を良くした。そして報告が終わった将軍は玉座の間を後にした。
※
将軍からの報告を受けた王も、玉座の間を後にした。そして一人で王城の奥にある庭園に向かった。
庭園は季節の花が咲き乱れており、とても美しかった。また国を象徴するかのような気持ち良い風も吹いていた。
そしてその庭園には一人の女性がいた。その女性は席に座り、優雅にお茶を飲んでいた。
その女性はまさに絶世の美女だった。褐色の美しい肌に、漆黒の長く綺麗な髪を持っていた。まるで女神かのようなこの女性の名はカミカゼ。
まさに女神だった。カミカゼは風の神で、この国を興した張本人だった。
王はカミカゼに近寄るとその足下に跪いた。その光景は見る者を驚かせるだろう。王国で一番偉いはずの王が跪いているのだから。
王は跪いたままカミカゼに今回の戦果を報告した。
「カミカゼ様、このたびもご尽力ありがとうございます。此度の戦も我々の勝利で終わりました!」
「そうかそうか! 良くやったぞ!」
カミカゼはクールな見た目に反して、少女のように嬉しそうにはしゃいだ。それはとても可愛らしかった。
喜ぶカミカゼを見て、王も嬉しそうだった。そしてカミカゼは王の頭を子供のように撫でた。王はそれを喜んで受け入れていた。
そしてカミカゼと王は、次はどこの国を攻めようかと楽しそうに話し始めた。まるで遊ぶ約束をする子供のようだった。
「それならばカミカゼ様、次は征服した国の近くにあります、リンドベル王国はいかかでしょうか?」
「リンドベル王国か……」
王の提案を聞いたカミカゼは少しだけ嫌そうな顔をした。なぜならその王国には同じ神であるレインがいるからだ。
「まぁ、軽く偵察するくらいなら大丈夫でしょう」
カミカゼは王の提案を呑み、リンドベル王国にまずは斥候を派遣することにした。本格的に攻める前の威力偵察だった。
こうして戦火は確実にレインのもとに近づいていた。
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