第14話 や、やっぱり〜
現代では考えられないが、 日本でも昔は元服っていって10代の頃に成人になったことを示す儀式があったけど、 この世界でも似たようなものがある。
それが神様にスキルを授かるとされる神授の儀だ。
1人前になったと認めた神様がお祝いとしてスキルを授ける…ということになっている。 ほんとかどうかはわからないけどね。 神様とかあったことないし。
ともかくこの儀式を経た子供たちは形式的には一人前として扱われるようになるのだが…これはやっぱり僕にどうするか決めろってことなんだろうなぁ。
さてどうするか…
フレイヤ様は着いてきて欲しそうな感じなんだよね。
僕個人としても美人さんに頼られたら悪い気はしない。
せっかく違う世界に生まれ変わったのだから広く世界を見てみたいと思う気持ちも確かにある。
…ただ成り行きで助けることになったとはいえ、 昨日出会ったばかりの人たちにそこまで執着があるわけでもないのも確かなんだよなぁ。
しかもおそらく命がけの旅になる。 ウマルみたいな相手とまた戦わないといけないのか…
昨日は場の流れに押される形で死地に飛び込んだものの、 一夜明けた今となっては自分の無謀さに顔から火が出る思いだ。よく生きてたよ僕…
そうやって僕が優柔不断に迷っていると答えを否と捉えたのかフレイヤ様は
「いや、そうだな…わたくしたちの問題に君のような無関係な少年を巻き込むべきではない。やはり当初の予定通りわたくしたちだけでガリアに向かおう。いくぞ、アリア」
「はっ」
そう言って出立しようとするフレイヤ様に待ったをかけようとした矢先に、 場に飛び出した影があった。
「待ってください。私を連れて行ってください!」
エミリア…
「わたし、まだフレイヤ様をちゃんと助け終わっていません。困った人を見捨てたら寝覚めが悪い、ってパパなら言うと思います!」
それを聞いてシュバイツァー夫妻はお互いに顔を見合わせてため息をついた。
「言い出したら聞かない頑固なところはさすが君の娘だね」
「あら、困ってる人を見るとすぐ打算なしに人助けしようとしようとするところはさすが貴方の娘だと思いますわ」
ああ、もう…なんか恰好悪いな…これじゃ僕がさんざん悩んでたことが馬鹿みたいじゃないか。
「僕も行きます。エミリアを放っておけないし。それにこの力を授かったことに意味があるならきっとこのためだと思うから」
「アキくん!」
「アキサムくん…すまない、ありがとう」
「年下なんだしアキでいいですよ、これから一緒に旅をすることだし。だから姫さんのこともフレイアさんって呼ばしてもらいますね」
「もちろんだともアキ。…なんだか男性を呼び捨てになんてしたことないもんだから少し恥ずかしいな…」
「むぅ…」
あまり照れるフレイアに見惚れていたらまたエミリアに怒られそうだからからかうのはこれぐらいにしておこうかな。
「ならば旅立ちの前にアキくんにはやってもらうことがありますね」
な、なんですかねアルクおじさん…?
なにか嫌な予感しかしないんだけど…
「僕たちまでは着いていくわけにはいかないし、 そのぶん君には僕ら4人の技術をしっかり身体で覚えてもらおうかな…と」
や、やっぱり〜
「うちの大事な娘を預けるんだからイヤとは言わないよね?」
モチロンデス、ハイ
「おお、そういうことなら腕がなるな〜」
「この間は手加減してあげたけどもう遠慮はいらないわよね?」
「この間は不覚をとって姫様にご迷惑をおかけしたがそろそろ私達のいいところをおみせしないとね!」
「ええ、もちろんです!」
父さん、母さん、アリアさんたち…みんな笑顔でにじりよってくるのやめてもらっていいですか?
ぎゃぁぁぁあ〜(泣)
その後、彼の姿を見た者は誰もいない…(嘘)
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