第9話 リ·アルト(引用リツイート)

エミリア視点

わたしのせいだ…わたしのせいで村のみんなが…パパもママもアキもみんな死んじゃう…

そう思って震えているとフレイア様が近づいてきて後ろからわたしを抱きしめた。


「あ…」

「エミリアちゃんはなにも悪くない。悪いのは君を巻き込んだ我々さ。」


背中にふれる人の体温のぬくもりに思わず涙があふれる。でも私を抱きしめるその体も微かに震えているような気がした。


「わたし…わたし…」

「ここまでわたくしたちを助けてくれてありがとう。でもここまでだ。エミリアちゃんはここに隠れていなさい。わたくしたちはここを出て命に代えてもヤツらを討つ。誉あるシグナルドの騎士たちよ。今こそわれらが誇り高き名誉を守る時がきた!我に従い敵を討て!」

「もちろんです、姫様。」


そういって彼女たちは最後に私の頭を撫でて山小屋を出て行った。

わたしはその場にうずくまり膝をかかえて泣きじゃくっていると


『ドンドン』


とドアを叩く音がした。

「え、誰…フレイアさん…?」




フレイア姫視点

わたくしたちが山小屋を出てしばらく進み、人ひとりがギリギリ通れるくらいの狭い橋の架かった渓谷を抜けたその先に、ひらけた場所があり、そこに帝国の一団が待ち構えていた。10人ほどの屈強な男たちがにやにやと笑いながらこちらを見つめている。

獲物をみるような目に背筋がぞわっとする。瞬時に各々に武器を構えて身構えると

その後方にいた指揮官らしき男が進み出てきた。


「これはこれは…美しいお嬢様がた、我々の招待に素直に応じて頂き感謝の極みでこざいます」

と仰々しく会釈してきた。


おのれ、姫様を愚弄するか…と怒りを露わにするアリアを制してこちらも前にでる。

「あら、招待に応じたからにはそれなりにもてなしてくれるんでしょうね。デザートにはあなたの首を所望しても構わないかしら?」


「クックック…いいねぇ…いきの良いやつは嫌いじゃないせ。そうだな…デザートはないがかわりに今から俺ひとりだけでお嬢さんがた全員を同時に相手にしてやる。そこで傷のひとつでもつけられたらお前ら全員無傷で通してやろう。姿の見えない火魔法使いはどうした?隠れているのか?出し惜しみするなよ?」


「彼女なら喧嘩別れしたわ。今頃どことなりへと行ってしまったんじゃないかしら?それよりその条件は本当でしょうね」


「ああ、本当だとも。俺は嘘をつかない男だぜ」

後ろの彼の部下たちがヒューヒュー、さすが隊長格好いい〜と囃し立てる。信用できるとも思えないけどチャンスといえばチャンス。同時攻撃でこの男を倒して部隊が混乱してる隙に全力で離脱する。これしかない。

私はアリアたちと目と目でコンタクトをとると男に対し一斉に仕掛けた。


「ウインドブラスト!」

「豪切断!」

「ライトニングアロー!」

「空破斬!」


しかし…


「効かねぇんだよ!…『反射』!」


なっ…きゃああああ!

…私達の攻撃を全て跳ね返したというの…?


「これが俺のレアスキル『反射』だ。何者も俺にかすり傷を負わせることも出来ない。いいねぇ…その絶望した表情。たまんねぇな…。後はお前らに任せる。姫以外は殺せ。わりぃな姫さん。あんたを連れてこいって上の命令でね。悪いが帝都までおつきあい頂こうか」


ここまで…なの…みんな…逃げて…


「おっと、そいつは困るな…そんなことをされたらうちの幼馴染がただでさえ泣きはらしているのに涙の海で溺れちまうぜ」

「もう、何言ってるのよアキ!フレイアさん、皆さん、ご無事ですか?」


後方からやってきたのは置いてきたはずのエミリアちゃんと、彼女と同い年くらいの少年だった。彼は私をかばうように反射の男の前に立ちはだかった。


「小僧、邪魔立てするなら殺すぞ」

「はっ…やれるもんならやってみなオッサン…いや、2よぉ」


「…この小僧をぶっ殺せ!」


そして放たれる暴力の嵐。思わず目をつぶった私に聞こえてきたのは『リ·アルト』という言葉と全ての攻撃を跳ね返した彼に対する怒号だった。


『アキサム・エドワーズ』

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