第8話 亡国の姫
フレイヤ姫視点
「姫、なんとか追っ手を一時的に撒いたようです」
「そうですか…アリア、貴女もサフランもユーリも少しは休みなさい。祖国を追われてここ数日ろくに休んでないでしょう」
ですが…と追いすがる護衛のアリアたちを無理やりテーブルにつかせ、山小屋で備蓄してあったという食料をありがたく皆で頂くことにする。
この3人は私が乳飲み子だった頃から側につけられた者たちで気のおける歳上の友人でもある。
わたくし達の祖国であったシグナルド皇国はグリザリオ帝国の電撃的な侵攻を受け敗北。父様やお兄様は戦でお亡くなりになられ、それを聞いたお母様はショックのあまり王宮から飛び降りておしまいに…。
わたくしも一度は後を追おうかと思いましたがアリアたちに説得され再起をはかるために叔母様のおすまいの聖ガリア王国を目指して城下を脱出したのです。
シグナルドを出て険しい山道を抜け、隣国のここベルトリオン共和国を経由してガリアに向かうつもりでしたがまさか少数とはいえ越境してまで追いかけてくるなんて…。いえ、道理の通る連中ではありませんでしたね…。しかし彼らは何故急にシグナルドに攻めてきたのでしょうか。
「この山小屋は簡易的ですが侵入をこばむ結界もありますし、入口もすぐには見つからないような細工をしておきました。しばらくは安全だと思います」
そう口をもぐもぐさせながら声をかけてきたのは追っ手と戦闘になっていた時に加勢してくれた私より4つも下の女の子のエミリア。
見過ごせなかった、なんて理由だけで飛び込んできた勇気ある娘。なんとか無事に村まで返してあげたいのだけど…。
「ここで彼らをやり過ごすことが出来れば出来ればいいのですが…」
そうわたくしたちが話し合っていると外からがなりたてるような大声が響き始めた。これは…拡声器とかいう最近開発された魔道具か?
「あ、あ…聞こえるか!シグナルドの小娘ども!お前達がまだこの山から出ていないことはわかっている!もしこのままお前達が出てこないようならふもとのフォルテーゼとかいう田舎村に火をかけるぞ!お優しいフレイヤ様ならちゃんとわかってくださるよなぁ?」
外道が…
「わたしの村です…」
エミリアちゃんが青い顔をして俯きながら呟いた。
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