第11話 秘密の共有

 俺は今焦っている。

 昨日助けた女の子がもしかしたら、魔法少女なのではないか。と。

 昨日は先輩との一件で気分が高揚していたせいで、あんな行動をしてしまったがその時にばっちり顔を見られているのだ。


 それに昨日は調子に乗って力も使っているからなぁ。あの子が魔法少女じゃなくても、もし後で魔法少女が来たら事情聴取でバレるだろう。


 いよいよ終わった。俺の怪人スローライフが根本から崩れ落ちていく音がする。

 はあああああああああああああああああ。


 

 ・・・・・・



 しかし、俺の予想とは裏腹に佐鳥からのアクションはこれと言ってなく、今日一日の学校が終わった。


 あ、あれ?

 もしかしてバレてないのか?


 だとしたら、俺の心配を返してほしいという気持ちにもなるが、バレていないのならこれ以上のものはない。バレていないことに安堵して、鼻歌交じりに校門に向かった瞬間に後悔した。

 もう一度言おう、校門で後悔した(???)


 なんと昨日助けた女の子らしき人物が校門に立っているのだ。

 いや、自意識過剰だ。用事があるのが俺とは限らない。きっと佐鳥とか佐鳥とか佐鳥に用事があるんだろう。そんなお得意のネガティブマインドで校門を通り過ぎようとして、声をかけられた。


 分かってたよ、分かってましたよ。多分そうだろうなぁって、でも可能性を信じてもいいじゃないですか!


 「えっと、怒ってる?」

 「え~と、どちら様で?」

 

 そして二の矢、お得意の知らんぷりである。


 「昨日会ったじゃない。もう忘れたの?」

 「昨日ですか……いえ、存じ上げませんが」


 そう言った瞬間彼女がムッと顔つきを変えた。


 え~。だってさぁ、たかが一回助けただけじゃん。運が良かったんだな、で終わりでいいじゃん。何で会いに来ちゃうんだよ!」


 「心の声が漏れてるわよ」

 「あ、いけね」

 「本人みたいで安心した。別人だったどうしようかと思ったから」


 どうやら俺の学校生活の終わりは今だったらしい。それはそれとして、俺はとりあえず彼女に提案をする。


 「ここじゃ目立つし、場所変えない?」

 「ええ、そうしましょ」


 

 ・・・・・・

 


 彼女行きつけのカフェに着き、注文を終えた後早速本題に入った。


 「昨日は本当にありがとう」

 

 カフェの中で女の子に頭を下げさせる男子高校生という図が出来上がっているので、俺は即刻頭を上げるように言う。


 「気にしないでいい。ただこのことは誰にも言わないでほしい」

 「わかってるわ。貴方がいなければ私は今頃死んでいたでしょうから」

 

 どうやら秘密にしてくれそうで助かった。

 俺の平穏はどうにか守れたらしい。


 「それよりも一つ聞いてもいいかしら?」

 「ああ、答えられる範囲で答えるよ」

 「怪人と言っていたけど本当なの?」

 「……ああ。事実だな」


 正直隠そうかと思ったけど昨日がっつり怪人だ!って自分で言ってるし、秘密にしてくれるらしいから問題ないと判断して頷いた。


 「貴方は正直なのね」

 「隠すにしても遅すぎるだろ?」

 「それもそうね。貴方が秘密を話してくれたから私も一つ秘密を教えるわ」

 

 別に対価とか求めてないんだけど……。

 とはいえ、俺は貰えるものは貰う主義だ。


 「私……」


 ゴクリ。


 「魔法少女なの」

 「……」






 


 

 


 


 

 

 


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪役の苦悩 @23232323232

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ