File6 journey
あれから十年の時が経ち、俺はもう四十手前で、七星くんは二十代の半ばにさしかかっていた。衰える一方の俺と比べて、七星くんはもう少年ではなくなっていた。ついでに身長も抜かれた。
あれから俺たちは、街にあった遺物を見ながら、宇宙船やコールドスリープの技術を完成させていった。思い出したくもないほど大変だった。非力さと無謀さを何度も味わった。
まあ色々あったんだけど、なんと完成しちゃったんだな、これが。
そして今日が、旅立ちの日だ。
宇宙に行くのは一応二回目……になるのか。前は地球でコールドスリープさせなきゃいけなかったけど、技術は進歩してたようで、あの『地球は青かった』もできるらしい。
「宇野さん、ワクワクが止まらないって顔してますよ」
「はは、もちろんだ。そう言うお前もな」
なんてったって、今から宇宙に行くんだ。これで胸が高鳴らないやつがいるか。
「……よし、じゃあ行くぞ」
「はい」
ロケットの自動発射装置のスイッチを押して、宇宙船に乗りこむ。
三。
二。
一。
遥かな宇宙へと、俺たちは飛び出した。
「「地球は、青かった……」」
ぴったりそろってしまって二人して吹き出す。完全に観光客気分だ。浮かれすぎだろ。
いや、こんなことをしてる場合ではない。本当に。改めて窓から地球を眺める。
雲の白色が描くマーブル模様。
緑や茶色とのコントラストに生命を感じる。
嘘みたいに丸い形をしていた。
闇の中で輝く青色の光。
我らの碧い星、地球は、どうしようもないくらい美しかった。
そして俺たちは、長い長い眠りにつく。
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