第16話 再調査の開始

翌朝、警察が訪れる時間が近づいてくると、私の心は緊張で張り詰めていた。直人はリビングでコーヒーを飲みながら待っていたが、その表情には不安が隠しきれなかった。子供たちはまだ寝ている。私はできるだけ平静を装い、警察の訪問に備えた。


ドアベルが鳴り、私は深呼吸をしてからドアを開けた。そこには警察の刑事が二人立っていた。


「おはようございます。佐伯直人さん、神谷美香さんですね?」一人の刑事が静かに言った。


「はい、そうです。どうぞお入りください。」私は冷静さを保ちながら、刑事たちをリビングに案内した。


直人は立ち上がり、刑事たちに挨拶した。「どうぞお掛けください。結衣の件についてお話があると聞きましたが?」


刑事たちはソファに座り、手元のファイルを開いた。「はい、実は結衣さんの死について新たな証拠が見つかりまして、それに基づいて再調査を開始することになりました。」


私は息を飲み、直人の隣に座った。「新たな証拠ですか?どのようなものなのでしょうか?」


刑事はファイルから一枚の写真を取り出し、テーブルの上に置いた。「こちらがその証拠です。これは結衣さんが亡くなった際に見つかったものです。当時は自殺と判断されましたが、毒物検査の結果、致死量の毒物が検出されました。」


「毒物?」直人は驚きと戸惑いの表情を浮かべた。


「はい。結衣さんの死は自殺ではなく、他殺の可能性が高いと判断しています。現在、誰が毒を盛ったのかを調査中です。」刑事は慎重に言葉を選びながら続けた。


私の心臓は激しく鼓動していた。警察が毒殺の可能性を示唆することで、私の計画が暴かれるのではないかという恐怖が頭をよぎった。しかし、私は冷静を装い続けた。


「私たちも結衣さんの死についてずっと疑問に思っていました。協力できることがあれば何でも言ってください。」私は直人の手を握りしめながら答えた。


「ありがとうございます。引き続きご協力をお願いすることになると思います。」刑事はそう言って立ち上がった。「また進展があればご連絡いたします。」


刑事たちが去った後、リビングには緊張感が漂っていた。直人は深いため息をつき、私の方を見た。


「美香、これは一体どういうことなんだ?結衣が毒殺されていたなんて…」直人は混乱した様子で言った。


「私も驚いているわ。どうしてこんなことに…」私は内心の動揺を隠しつつ、答えた。


その夜、私は寝室で一人静かに考えていた。結衣を毒殺したのは私自身であり、その事実が暴かれるのは時間の問題だった。しかし、家族のために全てを守る覚悟を決めた。


再調査が始まり、真実が徐々に明らかになる中、私は自分の秘密を守り続けることができるのか。

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