第6話 取締役会の裏切り

翌朝、私たちは集めた証拠をもとに、取締役会で隆二の不正行為を暴露する計画を立てるために早めに出社した。オフィスに着くと、直人さんは私に微笑みかけ、安心させてくれた。


「美香、今日は大事な日だ。君の協力がなければここまで来られなかった。」直人さんの言葉に、私は力強く頷いた。


「私も同じ気持ちです、直人さん。今日、真実を明らかにしましょう。」私は自分に言い聞かせるように答えた。


取締役会の会議室に入ると、すでに多くの取締役たちが集まっていた。部屋の空気は緊張に包まれており、誰もがこれから起こることを予感しているかのようだった。直人さんは自信に満ちた表情で前に立ち、私もその隣に立った。


「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。」直人さんが静かに口を開いた。「今日は、重要な話があります。財閥の未来に関わる重大な問題について、真実を明らかにするために、ここに立っています。」


直人さんが集めた証拠の一部を見せながら説明を始めた。彼の声は落ち着いており、言葉一つ一つに力が込められていた。取締役たちの視線が一斉に彼に集中する。


「これらの書類は、隆二さんが関与している不正取引の証拠です。彼は財閥の資金を不正に利用し、私利私欲のために動いています。この証拠を基に、私たちは真実を明らかにし、財閥の未来を守らなければなりません。」直人さんの言葉に、私は強く頷いた。


突然、ドアが開き、隆二さんが入ってきた。彼の表情は冷酷で、怒りが滲んでいた。部屋の空気が一瞬にして張り詰めた。


「直人、お前がこんなことをするとは思わなかった。」隆二さんは冷たく言い放った。「しかし、証拠があるからと言って、簡単にことが運ぶと思うな。」


彼は取締役たちに向かって話し始めた。「皆さん、聞いてください。これは直人の個人的な vendetta(復讐)です。私を失脚させるために、捏造された証拠を使っています。」


取締役たちの中には困惑した表情を浮かべる者もいた。隆二さんの言葉に揺さぶられているのが分かった。


「美香、次の証拠を出して。」直人さんが私に囁いた。


私はすぐに次の証拠を手渡し、直人さんはそれを皆に示した。「これらは、田中美里さんが提供してくれた証拠です。彼女は隆二さんの秘書として、全ての取引を目の当たりにしていました。彼女の証言がこれを裏付けます。」


その瞬間、ドアが再び開き、美里さんが入ってきた。彼女は緊張した面持ちで壇上に立ち、証言を始めた。


「私は田中美里です。ここにいる隆二さんの秘書として、彼が行ってきた不正行為を全て見てきました。これらの証拠は全て本物であり、彼の行動を証明するものです。」美里さんの声は震えていたが、決意に満ちていた。


隆二さんの顔が次第に険しくなり、彼の計画が崩れつつあるのが分かった。しかし、彼は最後まで諦めなかった。


「お前たちは私を陥れようとしているが、そう簡単にはいかないぞ。」隆二さんは冷笑しながら言った。「取締役たちを脅して、私の計画を潰すつもりか?」


突然、会議室のドアが激しく開き、複数の警察官が入ってきた。彼らは隆二さんに向かって進み、彼を拘束し始めた。


「何をする!俺には何もしていない!」隆二さんは抵抗したが、警察官たちに押さえつけられた。


「隆二さん、あなたの不正行為はすでに暴かれました。今こそ、法の裁きを受ける時です。」直人さんの言葉が会議室に響いた。


その後、取締役会は直人さんの指導のもと、財閥の未来を話し合うために再び集まった。私たちはついに隆二さんの陰謀を暴き、財閥の未来を守るための一歩を踏み出した。

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