第39話
私は今、ルアーに抱きついていて、頭を撫でられていた。
……本当に、最悪。
「ご主人様、可愛かったですよ」
「──ッ、うるさい」
こんなことを囁かれながら。
それもこれも、当たり前だけど、全部ルアーのせいだ。
何か怖いのが来たかと思うと、体がビクッ、ってなって、長いこと生きてきたのに、経験したことの無いような快感が私を襲ってきたんだよ。
だから、その時、声を我慢できずに、反射的に抱きついてしまっていたルアーに死ぬほど恥ずかしい声をいっぱい聞かれたんだよ。
……その後もしばらくは体が敏感でルアーに少し触られるだけで……って、もう思い出したくもない。あんな恥ずかしいこと、思い出すだけで顔が熱くなって、おかしくなっちゃいそうだから。
「……ルアー」
ルアーの手を跳ね除けながら、私は名前を呼んだ。
「ぁ……なんですか? ご主人様?」
「…………さっきの、何?」
「さっきの? さっきのってなんですか? ご主人様」
分かってる癖に、ルアーはそう聞いてきた。
「……うるさい。分かってる、でしょ。……教えてくれたら、特別に許してあげるから」
本当は奴隷の癖にご主人様である私をあんなに辱めてきたんだから、絶対に許したくなんてないけど、あんな感覚は初めてだったし、知的好奇心が刺激されて、私はそう言った。
「……反応的に薄々察してはいたんですけど、本当に知らない……初めてだったんですか? ご主人様?」
「……違う。……初めてなんかじゃない。私はルアーと違ってお姉さんで色々経験豊富だなんだから」
本当は全然知らないことで初めてのことばかりだったんだけど、ルアーの言い方がなんか馬鹿にしてきている気がして、気がついたら、私はそう言ってしまっていた。
……自分で言っている通り、私はルアーには経験豊富だってことにしてあるし、仕方ないと思う。
「そうなんですか?」
「……当たり前、でしょ」
「なら、私がわざわざ教える必要なんて無くないですか?」
「……私がルアーの知識がちゃんと正しいのかを確認してあげるって言ってるの。早く、教えて」
その上で許してあげるって言ってるんだから、ルアーは余計なことなんて何も言わずに、たださっきのがなんだったのかを言えばいいんだよ。
「分かりました。……さっきのはですね、一言で言うなら、えっちなことですよ」
「……う、うん。それで、なんで、あんな感じになったの」
「こっちに来てくださいよ、ご主人様」
ルアーは自分の膝のところをポンポンとして、そう言ってきた。
……なんでご主人様である私がそんなところに座らないと……あれ? でも、逆にご主人様だからこそ、なのかな?
だって、別に私が下な訳じゃなく、普通に奴隷であるルアーが下だもんね。
「……ん、まぁいいよ」
そう思って、私はルアーの膝の上に座った。
「それじゃあ、ご主人様の体を使って教えていきますね」
「……? ん、分かった」
私が頷いた瞬間、ルアーが私の胸に手を当ててきた。
「……な、なに、してる……どこ、触ってる……さっきのは教えてくれるのなら特別に許してあげるって言ったけど、また触るのは──」
「説明のためですよ?」
「…………分かってる。……いきなりだったから、びっくりしただけ」
なら、最初からそう言ってよ。
そう思いつつも、私は全然余裕な振りをして、そう言った。
「触りますね? ご主人様」
「……んっ、もう、触って──」
「個人差があるんですけど、ご主人様の胸はかなり敏感なので、直ぐに硬くなってきてますね。可愛いですよ」
ルアーがまたさっきみたいに耳元で囁くように何かを言ってきた。
……また、さっきの、気持ちいいのがきそうだった。……なんでか分からないけど、さっきより早い気がする。
「ご主人様、気持ちいいですよね? でも、こっちを弄ったら、もっと気持ちよくなれますよ?」
「……んっ、ひゃぁっ……ど、どこっ、触ろうとしてるっ」
「ダメなんですか? それとも、何か間違ってましたか? ご主人様」
「……ぅ、べ、別に、間違っては無い、けど……だ、ダメなものはダメ、だから」
さっきの胸だけで気持ちよくなるやつ? だけでも初めての快感でおかしくなりそうだったのに、あれよりもっと気持ちよくなるなんて、耐えられる訳が無い。
だから、ダメに決まってる。……そもそもの話、胸を触られるのでさえも恥ずかしいのに、それ以上に恥ずかしいあそこを触られること自体が耐えられないし。
「でしたら、もう一度胸だけで気持ちよくなっちゃいましょうね、ご主人様」
「……ぇ? あ、も、もう分かったから、触らなくてもいいっ──」
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