第38話

 結局下着は見つかることなく、私は諦めてリビングに戻り、ソファで寛いでいた。……現実逃避とも言うのかもしれない。

 嫌な人のことを思い出させられて、ただでさえあんまりいい気持ちじゃなかったのに、下着が見られている、もしくは見られるかもしれないという心配事が突然できてしまったんだ。仕方ないと思う。


 そうして、ソファから落ちないように気を配りつつゴロゴロとしていると、玄関の扉が開く音が聞こえてきた。

 ……ルアが帰ってきたんだと思う。……と言うか、それ以外だったら普通に怖すぎる。

 実力を考えたら、絶対に私が負けることなんて無いけど、人と関わりたくなんてないし、嫌だ。

 ……この家にも防御魔法やトラップ系の魔法でも仕掛けておこうかな。

 家だけじゃなく、庭にも仕掛けとくかな。害意を持って入ってきた人にだけ発動するように細工しておけばいいだけだしね。


「ご主人様! ただいまです!」


 そう思っていると、帰ってきたルアがリビングに入ってくるなり、何かを期待するような声でそう言ってきた。

 ……気が向いたらってあの時ちゃんと言ったのに、私に褒められるのを期待してるってこと、なのかな。

 ……あの時は全く褒める気なんて無かったけど、私に褒められるのを楽しみにしてここまで元気に帰ってきたんだと考えると、ちょっと可愛らしく感じてきてしまって、少しくらいは褒めてあげてもいいかなって気持ちになってきてしまっていた。

 ……今はもうルアが子供だってことも理解してるからこそなんだろうな。


「ご主人様? また、眠ってるんですか?」


 ソファの背もたれ側に顔を向けて寝転んでいたからか、さっきの声量が嘘だったかのようにルアはそんなことを小さく確かめるように聞いてきた。

 ……下着のことを聞かなくちゃならないんだけど、それが嫌すぎて、私は返事をすることが出来なかった。

 

 ルアが私のすぐ後ろまで近づいてきているのが気配で何となく分かった。

 その瞬間、私は目を閉じて、眠っているフリをすることにした。

 ……私が眠ってると思ったらルアは何をするのかな、と少しだけ気になったからだ。……まぁ、結局これも現実逃避なんだけどさ。

 ……よく考えたら、普通にこれから朝食……もう昼食? を作るか。そのためにルアは外に買い物に行ってたんだから。


「ご主人様、好きです」


「……んぅっ」


 そう思っていると、突然耳元でそんなことを囁かれたかと思うと同時に、多分だけど、耳にキスをされてしまい、少しだけ声が漏れ出てしまった。

 

 そこで目が覚めたことにして、ルアに何をしてるんだと怒ればよかったのに、私は眠っているフリを続けてしまった。

 力が抜けて、頭が真っ白になって、そんなことを考えている余裕がなかったからだ。


「……ご主人様、可愛いです」


「……んぁん、んっ」


 ルアはまた私の耳元で訳の分からないことを囁いてきたかと思うと、また耳にキス……では無く、今度は耳に生暖かい何か……聞こえてくる吐息の感じからして、舌を入れてきた。


 待って、こいつ、奴隷の癖に、何、やってるの!?


「……る、ルアー……な、に、してっ、んっ、なっ」


 流石にこのまま寝たフリを続ける訳にはいかないと思い、私は声を出した。

 ……なのに、ルアはやめることなく、それどころか、私の背中にピッタリくっつくようにルアも寝転んできたかと思うと、そのまま私を後ろから抱きしめるようにして、私の掴みにくいであろう胸を下から上にあげるように触ってきた。


「……やっ、らっ。る、あー、やっ、んっ……や、やだ……」


 何か、体の奥底から湧き上がるような感覚がしてきた。……私はそれが怖くて、無理やり体の方向をルアーのいる方向に変えて、ルアーに抱きついた。

 こんなことななっている原因がルアーだってことは分かってるはずなのに、反射的に。

 

「……こ、わい、や、や、だ……」


「ッ、大丈夫ですよ、ご主人様。……本当に、可愛いです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る