第40話

 また、私はルアーに頭を撫でられていた。

 ……今回は私が言ったことでもあるし、文句は言えない。

 だからこそ、私は大人しく、ルアーになるべく顔を見られないようにしながら、奴隷なんかに頭を撫でられるのを我慢していた。


 ……私が言ったこと。……それは理解しているけど、あんな辱められ方をして、不満が無いわけじゃない。

 だからこそ、何も言いはしないけど、私の中には恥ずかしいという気持ちと一緒にルアーに対する理不尽な苛立ちという気持ちが同居していた。


「ご主人様、可愛いです」


「……ッ、ぅ、るさい! ルアーはさっさと朝食でも作ったら!」


 もう朝食なんて時間では全く無いけど、私はそう言った。

 そして、自分で言ってて、思い出した。

 今回は私が言ったことだから文句は言えないって思ってたけど、よく考えたら、最初に許可もなくあんなことをしてきたのはルアーの方なんだから、私のこの怒りは理不尽なものでは無いのかもしれない。

 ……うん。仮にそれが分かっても、ルアーにあの快楽のことを教えてくれたらさっきのことは許してあげるって言ってしまってる以上、私は文句なんて言えないんだけどさ。


「……作る気持ちはありますよ。……でも、ご主人様が可愛すぎるのがいけないんです」


「……意味っ、分かんないこと言ってないで、早く、キッチンの方に行ってきて」


 行き場のない怒りを吐き捨てるようにそう言って、私は多少無理やりだったけど、ルアーを買ってきたであろう食材を持たせてキッチンの方に行かせた。

 

 ルアーが戻ってこないのを確認して、私はソファにまた横になった。

 そして、アイテムボックスから適当な毛布を取り出して、上から掛けた。

 寒かったから……とかではなく、今は窓の隙間から感じる風にすらも当たりたく無かったからだ。

 ……まだ、ルアーにやられたあれのせいで体の感覚が色々と敏感になってて、風に当たるだけでも、なんか、落ち着かないし。


 ……さっきは寝たフリだったけど、もう、ほんとに寝ちゃおうかな。

 どうせルアーが料理を作り終わったら起こしてくれるだろうし。…………やっぱり、やめとこ。

 またさっきみたいなことをされたら堪らないし。


 ……というか、今更だけど、私、まだルアに下着のこと聞いてないや。

 ……もう、いいかな。……下着を見られるのは絶対に嫌だけど、それよりも恥ずかしいことをされたし、そもそもの話、今は下着のことを聞く気力が起きないし。

 また明日……いや、明後日くらいにまだ見つかってなかったら聞こう。

 

 もう今はルアのことを気にしないように、魔法の開発、或いは改良でもして、現実逃避でもしよう。

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