第36話
「……ほんとにもう、終わり」
「ぁっ」
呟くようにそう言って、私は今度こそ、ルアに離してもらって、ルアから離れた。
なんか、ルアが残念そうにしている気がするけど、さっきまでの状況が特別すぎたんだから、無視でいい。
流石に贅沢すぎるから、奴隷の癖に。
「……ルア」
そして、ルアから離れた私はそのままソファに移動て、腰を下ろしつつ、ルアの名前を呼んだ。
「は、はい、なんですか? ご主人様」
「……今更、かもだけど、ルアって料理とか、出来るの?」
さっきのルアへの特別なご褒美? でかなり気が紛れたとはいえ、朝食も夕食も今日は作る気が起きないから、そう聞いた。
……作る気が起きないからといって、どこか店に行くなんてのは論外だけど、ルアが何かを作れるのなら、まぁ、私の所有物だし、そんな所有物が作ったものなら、普通に食べれると思う。
「え、えっと、はい。あんまり自身は無いですけど、出来ます」
「……そう。なら、今日はルアが作って」
「は、はい。それは分かりましたけど、食材、あるんですか?」
……私があっちの家から適当に取ってきたらあるにはあるけど、ルアが私の奴隷になってから、同じようなものしか食べさせてないし、そろそろ飽きてきている可能性も考えて、ルアに適当に食材を買ってきてもらって作ってもらう方がいいかな。
「……これで、適当に買ってきて、作って」
そう思った私は、改めてルアに適当にお金を渡しつつ、そう言った。
私としてはもうずっと同じような食生活だったし、今更飽きることなんてないんだけど、私は優しいご主人様だからね。
わざわざルアの……奴隷の為に色々と考えてあげてるんだよ。
「わ、私が行くんですか?」
「……他に誰がいるの」
私は知らない人が大勢いる外になんて出るくらいだったら、一日くらい何も食べなくても平気だと思うし、何も食べない方を選ぶよ。
ルアがそれでもいいなら、別に私はそっちでもいいけど。
「で、でも、私、さっき怖い目にあったばかりですよ……?」
そう思っていると、不安そうにルアはそう言ってきた。
……言われてみれば、そうか。
私のおかげでかなり回復してるだろうとはいえ、起こった事実は無くならないもんね。
「……指輪があったら、大丈夫だから」
それは分かってるんだけど、私はそう言った。
だって本当に私が渡した指輪さえしてれば大丈夫だし。
「……別に、行かなくてもいい。……でも、その場合、私は今日、何かを作る気なんて絶対起きないから、食事は抜きだよ」
「うぅ、わ、分かりました。行ってきますよ……」
なんでそんな仕方ないから、みたいな感じなの。
私は別に一日くらい食事なんて抜きでもいいんだから、ルアが食材を買いに行くのは自分のためでしかないのに。
「帰ってきたら、褒めてくださいね?」
「……買い物に行くだけでしょ。早く行ってきて」
「……はい」
「……はぁ。……気が向いたら、褒めてあげるから、早く行ってきて」
「ほ、ほんとですか?」
「……ん」
「は、はい! でしたら、直ぐに行ってきます!」
面倒だと思いながらも私がそう言ってあげると、ルアは嬉しそうにして、服を着替えてから家を出ていった。
……私、ちゃんと気が向いたらって言ったよね? なんでそんなに嬉しそうに……いや、まぁいいや。
私は私でさっきの出来事のせいで精神的に疲れたし、休んでよ。
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