第34話
……一応、様子を見に行った方がいいのかな。
私が渡した指輪がある限り、ルアの体は心配なんてしていないけど、よく考えたら、精神は危ない状況になっている可能性がある気がしてきたから、ちょっとだけ心配になってきた。
指輪に付与した魔法が発動してるってことはルアに危害を加えられそうになったってことだろうし、それに精神的ショックを受けてる可能性があるし、それ以外にも単純にルアに危害を加えようとした相手が魔法でとんでもない怪我をして、それを目にしたルアが精神的ショックを受けている可能性があるからね。
……その辺の対策ができる魔法も付与しておけば良かったかな。
そう思いつつ、私はベッドから起き上がって、部屋を出た。
そして、そのまま玄関の方に向かった。
「……ルア、大丈夫?」
すると、ルアは普通に玄関のところに立っていて、そんなルアの目の前には何かが煙を立てながら倒れていた。
よく見ると、それが人間だということが分かった。
つまり、あれがルアに危害を加えようとした人間ってことか。
……まぁいいや。あんなのより、今はルアの精神状態だ。
「あっ、ご主人様っ!」
ルアが私の方に走ってきたかと思うと、思いっきり私に抱きついてきた。
勢いがあまりに強くて少し倒れそうになったけど、魔法で少しだけ身体能力を上げて、私はそんなルアを受け止めてあげた。
いつもだったら、ルアは奴隷で私はご主人様なんだから、みたいなことを考えてるだろうけど、今はまぁ特別に許してあげよう。
慣れてない子があんなのを見たら当然精神的ショックを受けるだろうし、今だけは本当に特別だ。
「ご主人様、怖かったです……」
……なんか、あんまり声色が怖かった風に聞こえないけど、まぁ、それならルアがご主人様に嘘をついてるってことになるし、そんなわけないか。
「……ん、よしよし、大丈夫、だよ」
仕方ないから、私はルアのことを抱き締め返しつつ、なるべく優しく頭を撫でた。
「んっ。でも、ご主人様が下さった指輪のおかげで何ともなかったです!」
「……ん」
そりゃ私が魔法を付与した指輪なんだから、当たり前だよ。
「……何があったの」
そんなことよりも、何があって指輪に付与された魔法が発動することになったのかが大事だから、私はそう聞いた。
内容次第では多分まだ生きているであろう、あれの息の根を止めないとだし。
……ルアは私の所有物で私の所有物に手を出そうとしたんだから、それくらい当たり前だよね。
替えがきくとはいえ、私の……私だけの奴隷なんだから。
「えっと、居るのは分かってるから、サフィ? さんを出せって言ってきて、急に腕を掴まれそうになったところで、ご主人様が下さった指輪の魔法? が発動したんです」
サフィ……私が昔に使ってた名前だ。
しかも、その名前を知ってるのは一人しか居ないはず。
「ご主人様?」
「……なんでもない。……ルア、あっちに行ってて。私も直ぐに戻るから」
「……大丈夫ですか?」
「……ん」
ルアが私のことを心配そうにしつつもリビングの方に戻って行ったのを確認した私は、予想通り生きていたルアに危害を加えようとした男を消滅させた。
文字通り、死体すら残さずに完全に消した。
……あの人なら、死体なんて残してしまったらそれを利用して何かをしてくると思ったから。
「……ん」
早く、ルアに会いたい。
……別に私としては全然ルアが近くにいなくたってどうでもいいんだけど、さっきルアは怖かったって言ってたし、近くにいてあげた方がいいと思うから。
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