第31話
「……そんなに引っ張らなくても、行くから、やめて」
何故か無駄に急ごうとして私の腕を引っ張ってくる生意気な奴隷に向かって私はなるべく冷たくそう言った。
「は、はい、ごめんなさい、ご主人様。……でも、私、早く来て欲しくて……」
すると、珍しくルアは直ぐに手を離してくれた。
何、早く来て欲しいって。
と言うか、向かってるのは私の部屋でしょ。
なんでルアが早く来て欲しいの……って、さっき言ってた通り、眠たいからか。
……本当、どれだけ寝るの、この子は。
まぁ、私はルアの言葉にさっき頷いたんだし、少しくらいは急いであげるか。
そう思って、私はルアに向かって手を差し出した。
「ご主人様?」
……めんどくさいな。ご主人様の意図を汲み取ることくらいしてよ。
「……急いで欲しいんでしょ。優しくなら、引っ張ってくれていいから」
「は、はい! ありがとうございます、ご主人様」
「……別に、ルアのためじゃないから。……ただ、私が歩くのがめんどくさいから、優しくなら奴隷に引っ張ってもらって楽をしたいと思っただけだから」
そう言うと、ルアは何故か顔を赤くしながら、私の言った通りちゃんと手を握って優しく引っ張ってきた。
「……よしよし、偉いよ、ルア」
そして、私の部屋の前に着いたところで、私はそう言ってルアの頭を撫でてあげた。
面倒だけど、言うことをちゃんと聞けた奴隷褒めてあげないとだからね。……ルアが子供だって気がついたからこそ、尚更。
ルアは抵抗せずに私が頭を撫でているのを受け入れている。
奴隷なんだし、ご主人様のすることに抵抗するなんてありえないんだけど、この子は私を舐めている生意気な子だし、少しだけ私も嬉しい。……いや、違う。嬉しくなんてない。別にどうでもいい。
そんなことより、強いて一つだけ言いたいことを上げるとするなら、ルアが私に抱きついてきている事だ。
……それ自体は別にいいんだけど、ルアの趣味に気がついてしまった私の身からしたら、下着をつけていない状態の胸を私に……ご主人様に押し付けて楽しんでいる変態にしか見えなくなってしまっていた。
……まぁ、いくらそういう趣味があるとはいえ、ご主人様にそんなことをするとは思えないし、私の先入観がそう思わせてるだけなんだろうけどね。
「……終わり」
そんなことを思いつつ、そう言って私はルアの頭を撫でるのをやめ、ルアから少し離れた。
「……もう、ですか?」
すると、甘えるようにしてルアはそう聞いてきた。
「……眠いんでしょ。……なら、早くベッドに行く」
「……はい」
こんなやり取りをしているうちに私も眠たくなってきた気がするし、さっさとベッドで横になって眠っちゃおう。
「……来て、ルア」
そして、先に横になった私はルアに向かってそう言った。
「は、はい。失礼します」
私の隣に横になってきたルアをいつも通り抱き枕にする。
相変わらず、やっぱり私は人肌が気持ちいいのか、こうしていると落ち着く。
「……おやすみ、ルア」
「は、はい。おやすみなさい、ご主人様」
なんか、ルアがいつもよりソワソワして、私に抱き枕にされながらもモゾモゾ? している気がするけど、さっきから感じていた眠気によって私は直ぐに眠りにつくことになった。
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