第30話
ルアは恥ずかしそうに私から胸を隠しながらも私の隣に座ってきた。
……下着を着け忘れたのなら、今からでも部屋に戻って下着を着けてきたらいいだけの話なのに、そのまま隣に座ってくるってことはやっぱりルアはそういう趣味に目覚めてしまってるってことなんだろうな。
「……ルア、一応聞いておくんだけど、下は履いてるの?」
別に興味があるわけじゃないけど、私は恥ずかしそうにしているルアに向かってそう聞いた。
もうルアがそういう趣味に目覚めちゃったってことは分かったし、別にいいんだけど、下も履いてないのなら、もうルアが下着を買いに行った意味が無いと思ってさ。
「し、下は履いてますよ!」
「……ほんと?」
「ほ、本当ですよ!」
「……そう」
ちょっと怪しいけど、確認する術なんてないし、私は適当に反応してその話を終えた。
結局ルアが下着を履いてようが履いてまいがどうでもいいし。
そう思って、またソファで寛ぎ始めようとしたところで、また私は思い出した。
そういえば私、ちゃんと脱いだ下着を服と別々に分けてたっけ。
……まさか服と一緒に置いてたりなんてしてなかったよね。……もしも一緒に置いてたんだとしたら、ルアに私が履いてた下着を見られてるってことになっちゃうんだけど。
「……」
「ご、ご主人様、ど、どこに行くんですか?」
心配になってきた私は、確認のためにお風呂場に戻ろうと無言で立ち上がった。
すると、何故か隣にいたルアが直ぐに私の手を握ってきて、そう聞いてきた。
……どこって、なんでご主人様である私が奴隷にわざわざそんなことを話してから行動しないといけないの。
「…………下着、片付けて来ようと思って」
そう思いつつも、私はそう言った。
ご主人様である私が奴隷に下着を見られたくらいのことで動揺している、なんて思われるのは嫌だから、なんでもないようにすました顔で。
「えっ……あっ、ご、ご主人様! で、でしたら、奴隷である私がやっておきますよ!」
……なんで急に奴隷っぽさを見せてこようとするの。
今じゃないって。私は下着を見られたくないのに、なんで今なの。
「……いい。自分でやるから」
「な、なんでですか? もしかして、私に……奴隷なんかの私に下着を見られるのが恥ずかしいんですか?」
「……そんなわけ、ない、でしょ。……ルアじゃどこに置いておけばいいのかが分からないだろうから、私がやるって言ってるの」
そう言いつつ、ルアが握ってきている手を振りほどいて、今度こそ私はお風呂場に向かおうとした。
「あっ、あっ、あっ、ご主人様!」
すると、今度は急にそんな奇声を上げて、私の手を掴むどころか、私に抱きついてきて、私のことを止めて来た。
「……何?」
「あ、あの、私、もう、寝たいです」
「……そう。私が寝る時に一度起こすかもだけど、好きにしたら?」
「そ、そうじゃなくて……ご、ご主人様と一緒に寝たいんです」
? いつも寝てるでしょ。……あれは一緒に寝てるって言うより、私の抱き枕になってるだけだけどさ。
……と言うか、そんなことより、ルアはどうしちゃったんだろ。正直、普通に変わった奴隷だとは思ってたけど、今は特に訳が分からない。
「……はぁ。じゃあ、一度だけでいいから、次に私が何かを命令したら絶対に言うことを聞くって言うのなら、いいよ」
奴隷がご主人様の命令を聞くことなんて当たり前の事なんだけど、私が最初にした好きにしていい、なんていう命令のせいでルアは基本的に抱き枕の時以外は私の命令を聞かずに自由にしていいってことになってしまっているし、私はそう言った。
なんか、ルアが必死そうだったからっていう理由もある。
……本当はこれから絶対に命令を聞くようにって行ってやりたかったけど、そんなことを言ったら普通に断られると思ったし、それは遠慮しておいた。
……どう考えてもご主人様である私が奴隷に遠慮するなんておかしいけど。
「わ、分かりました。それで大丈夫です!」
「……そう」
なら、下着のことは明日でいいか。
なんか、もう大丈夫だって気がしてきたし。
私ならちゃんと下着と服を分けて置いてたでしょ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます