第24話
……一人になった。……うん。一人になったはいいんだけど、これからどうしよう。
特にやることもないけど、だからといってあっちの家に戻るのは嫌だ。
今のルアと顔なんて合わせたくないし。
……油断しなかったらいいって思っておきながら、またまんまと奴隷なんかに唇を奪われてしまった自分にも腹が立つ。
もちろん、ルアーが一番悪いに決まってるんだけどさ。
奴隷の身分なのに勝手なことを言って、勝手に私にあんなことをするなんて、普通に考えておかしいもん。
……はぁ、どうせ暇だけどまだ戻りたくは無いし、久しぶりにキノコでも食べようかな。
美味しいけど毒が無いと確信が持てないキノコ。
ルアがいるから食べれてなかったけど、今は居ないし。おやつみたいな感じで食べよ。
未だに怒りからか顔が熱かったから、そう思うなり私は直ぐにキノコを焼くために動き出した。
焼く以外の料理を出来たら良かったんだけど、出来ないから、本当にただ焼くだけだ。
美味しいことに間違いはないし、それで少しはルアに対する怒りも気が紛れるでしょ。
……ルア、どうしてるかな。
キノコを焼いて、適当にソファに座りながら食べ始めたところで、私はかなりさっきのことに対して気が紛れたのか、そんなことを思った。
やっぱり、私がいきなり怒って消えちゃったから流石に後悔してるかな。
……食べ終わったら、一度こっそり戻ってみようかな。
私は心が広いし、後悔してるようだったら普通に許してあげよう。
そう思って、キノコを食べ終えた私はあっちの家に向かって転移した。
「……んぅ」
すると、そこにはルアが居ない……なんてことは全くなく、ソファに丸まって眠っているルアの姿があった。
……さっき起きたばっかじゃん。なんでまた寝てるの。
……と言うか、少し大人げなかったかなとは思うけど、私が……ご主人様が自分の行動で怒って家を出ていっちゃったんだよ? 何かもうちょっと心を病むとかさ、色々あるじゃん、普通。
何にもなく眠ってるなんてことある?
「……ルア、起きて」
もう初めてでは無いとはいえ、き、キスなんかをいきなり許可なくしてきたくせに呑気に眠っているルアに腹が立ち、ソファ事投げ飛ばしてやろうかとも一瞬思ったけど、流石にそれじゃあルアが怪我をしちゃうし、そんなことはせず、私はそう言いながらルアの体を揺らした。
「ご主人様……? 戻ってきたんですか?」
「……なに、寝てる」
「私の好きにするはずだったご主人様がどこかに行ってしまったので、ご主人様の後味……匂いを楽しんで待ってようと思ってたんですけど、気がついたら眠ってしまってました」
……どうしよう。
もうルアの言ってることが訳分からなすぎて怒りが冷めてきたかもしれない。
ただ、このままこの前みたいに私が許してしまったら、ルアはまた調子に乗って同じようなことをしてくるかもしれないし、何か罰は与えないと。
「……取り敢えず、まずは謝って」
よく考えたら、この前だって結局謝ってもらって無いし、私はそう言った。
「……私は経験豊富だし、き、キスくらい、別に何ともないけど、勝手にするのはダメなこと、なんだから、謝って」
「ちゃんと一番最初に抱き枕の時以外は私の好きにしていいってご主人様に言ってもらってますよ?」
「……確かに、言ったけど、私のことを好きにしていいなんて言ってない」
この前も言ったけど、何度でも言わせてもらう。
「……いいから、早く謝って」
「……ご主人様も幸せそうだったのに、ですか?」
「……怒ってただけ、でしょ。……訳の分からない勘違いなんてしてないで、早く謝って」
「分かりましたよ。……ごめんなさい、ご主人様」
なんでそんな渋々って感じなの、とは思うけど、一応ちゃんと謝ってくれたし、許してあげることにした。
「……よしよし、よく謝れたね」
そして、そう言ってなるべく優しく抱きしめてあげながら、頭を撫でてあげた。
ルアはエルフだから正確な年齢は分からないけど、多分、この感じからして私より子供なんだと思う。
だから、めんどくさいけど、ちゃんと謝れた子は褒めてあげないとと思って。
「ふぇあっ、ご、ご主人様……?」
「……ちゃんと謝れた、ご褒美」
悪いことをしたんだから謝ることなんて当たり前のことだけど、相手が子供なんだと思えば、特に思うところはなかった。
「ご、ご褒美は嬉しいですけど、こ、これじゃあ子供を褒めるお母さんです……」
お母さんでは無いけど、私がちゃんと言わないと謝ることも出来ない子供なんだから、別にいいでしょ。
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