第23話
「ご主人様」
お互い朝食を食べ終わったところで、ルアが私のことを呼んできた。
「……何」
「朝食も食べ終えましたし、そろそろ好きにしてもいいんですよね?」
そして、そう聞いてきた。
……私のことじゃないよね。私のことじゃないのなら、別に好きにしてくれたらいいけど。
「……前みたいな感じじゃないよね?」
「前? 前っていつですか?」
「……だから、ルアが私の物になった日だよ」
正確にはその日の次の日なんだけど、細かいことはいいんだよ。ルアに伝わればそれでいい。
「何かありましたっけ?」
ルアは不思議そうに首を傾げて、そう言ってきた。
……さっきも聞こえてた癖に聞こえてなかった振りをしてきたばかりだし、絶対分かってるくせに分かってないふりをしてきてるだけだ。
「……だから、ルアが私に勝手にしたこと、だよ」
「? はっきり言ってくれないと分からないですよ、ご主人様」
「……はっきりって……だ、だから、あれ、だよ。……分かる、でしょ」
「分からないから、こうやって聞いてるんですよ?」
……絶対いじわるしてきてるだけだ。
「……だ、だから、き、キス、のこと、だよ」
そう思いつつも、私はそう言った。
「キス?」
すると、ルアはまた惚けたようにそう聞いてきた。
「……そ、それはほんとに分かるでしょ」
「これのことですか?」
「ッ……!?」
私の言葉を聞いたルアはそう聞いてきながら顔を近づけてきたかと思うと、そのまま、またあの時みたいに、き、キスをしてきた。
「……な、なに、してる」
「これがキスなのかを実際にしてみて聞いただけですよ? それよりご主人様、どうしたんですか? そんなに顔を赤くして」
絶対に分かってるくせに、ルアはそんなことを聞いてきた。
そもそも、確かに赤くなってるかもだけど、顔が赤くなってるのはこの前と同じでルアの勝手な行動に怒ってるからだし。
「……う、うるさい。……誰のせいだと思ってるの」
「誰のせいなんですか?」
ほんとに、この奴隷はやっぱり私のことを舐めてると思う。
じゃなきゃこんなこと言えるわけないもん。
「……もういい。……私以外のことなら好きにしていいから、どっか行って」
「……え、ご主人様は好きにしちゃダメなんですか?」
「……当たり前。……怒るよ」
もう怒ってるけど、それを言ってまた変なことをされたら堪らないから、私はそう言ってルアに早くどこかへ行ってもらおうとした。
「でも、今そんなことを言われたって、好きにしていいって命令があるんですから、私はご主人様を好きにできるんですよ?」
「……私の方が強い」
「知ってます。それに、仮にそうじゃなかったとしても、私はご主人様が本当に嫌なことはしませんよ」
「……してるじゃん」
何を言い出すのかと思えば、そんな言い訳、もう通用するわけないから。
「してませんよ」
「…………ほんとにもういい。早くどっか行って。……さっきのお金、そのまま好きに使っていいから」
……今ルアが近くにいたらイライラで顔が熱いし。
「キス、嫌でしたか?」
「……当たり前、でしょ」
「良かったです」
私の顔をまじまじと見た後、ルアはそう言ってきた。
……嫌だって言ってるのに、なんで嬉しそうなの。
意味わかんないし。
もういいや。
そう思って、私は強制的に一人になるために森の奥の家に一人で転移した。
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