第20話
「すぅ……すぅ……」
嫌々ながらもしばらくルアを胸に押し付けるようにして抱き枕にしていると、小さくはあるけど、そんな寝息が聞こえてきた。
それを確認した私は、ゆっくりとルアを抱きしめるのをやめて、ベッドから降り、ルアを起こさないように部屋を出た。
別に奴隷なんかに気を使っている訳では無い。
ただ、単純に今ルアが起きたらまたさっきみたいなことをしてこようとしてくるかもしれないし、眠っててもらう方が私にとって都合が良くていいんだよ。
……別に興味がある訳じゃないけど、暇だし、ルアがどんな服を買ってきたのかでも確認しようかな。
ご主人様として、奴隷がどんなものを持っているのかは知っておく権利があると思うし。
そう思って、私はルアが買ってきたであろう服を探し始めた。
すると、直ぐにそれは見つかった。
だって、普通に家を買った時から置いてあった机の上に置いてあったから。
……なんか、私が持ってる服より可愛い。
いや、別に私は適当に買ったやつばかりなんだし、当たり前と言えば当たり前なんだけど、ご主人様と比べて奴隷の方が可愛い服を持ってるって、おかしいでしょ。
……まぁいいや。
それで、こっちは、下着……?
……いや、何これ。
別に見る気は無かったんだけど、ルアが買ってきた服を見ているうちに下の方にあった下着が見えてしまい、私は思わずそんなことを思ってしまった。
だって、びっくりするくらい見えてしまった下着があれ、なんだよ。……その、透け透けっていうか、うん。絶対あんなの履いてても何も隠せないと思うような下着だったんだよ。
もちろん普通の下着もあったんだけど、やっぱりあれが目に付いたし、印象に残ってしまっている。
……勝負下着的なさ? そういうのを持ってるのは全然いいと思うよ? でも、ルアは奴隷でしょ。誰との勝負に使うの。
私、解放なんてする気ないからね。
まぁ、うん。見なかったことにして、もう一回下の方に仕舞っておこう。
奴隷ではあるけど、これは見られたら絶対死ぬほど恥ずかしいだろうし、私の心のうちに閉まっておいてあげよう。
羞恥心を与える復讐はもう終わってるしね。
……またさっき変なことをしようとしてきてたけど、あれは未遂だったし、見逃していいはず。
そう思って、もう少しだけ私は服を確認しだした。
これは、ネグリジェってやつ? ……さっきも言ったけど、意味ないって。奴隷から解放なんてしないんだから、見せる相手なんて居ないよ。
確かに、抱き枕の時以外は好きにしていいとは言ったけど、誰かと恋愛なんてしていいわけが無いからね? ……ちゃんと分かってるとは思うけどさ。
うん。これも仕舞っておこう。
「……おはようございます、ご主人様。……いつ起きたんですか?」
そうして、ネグリジェも仕舞ったところで、ちょうどルアが部屋から出てきて、まだ眠たそうに軽く目を擦りながらそう聞いてきた。
……見られてない、よね?
いや、別に見られてても問題は無いんだけど、一応、あんな下着やネグリジェがあったわけだし、あれのことは心の内に仕舞っておくと決めたんだから、バレないに越したことはないと思うんだよ。お互いにさ。
「……さっき、起きた」
「……私も起こしてくださいよ」
「……なんで、私が……ご主人様が奴隷を起こさなくちゃならない」
相手が奴隷でも起こすくらいならいいんだけど、私は自然にルアが買ってきた服から離れるためにそう言った。
「あっ、な、中、見ました?」
すると、ルアも私の近くに置いてあった服の存在に気がついたのか、私にそう聞きながらいそいそと服を回収していた。
「……奴隷の服になんて興味無い」
「そ、そう、ですか。え、えっと……あの、これを置いておく場所は……」
何故か心做しか少し複雑そうな顔をしつつ、ルアはそう言ってきた。
「……そこの部屋、ルアの部屋にしたらいいよ」
「い、いいんですか?」
「……ん」
「あ、ありがとうございます! 早速置いてきますね!」
「……ん」
部屋に入っていくルアを見た私は、もうさっきのことは忘れるようにして、朝食をルアに買ってきてもらおうかな、と思いお金を用意して、ルアが部屋から出てくるのを待った。
人は嫌いだけど、串焼きとかそんな感じのなら別に誰かが作ったやつでも食べられるから。
……料理とかは無理だけど。
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