第19話
ルアが服や下着を買いに行ったのを見た私は、直ぐに家の中に入って、適当な部屋を私の部屋と定めた。
そして、そこにベッドを出すなり、直ぐに横になった。
「…………疲れた」
普段独り言なんて滅多に言わない私だけど、思わずそう呟いてしまうくらいには精神的に疲れていた。
……この前も今日と同じくらいに精神的に疲れてたけど、こんなことは無かったのに、なんでだろ。……ルア……奴隷がすぐ近くにいてくれたのが案外良かったのかな。
そのために買ったんだけど、効果があったみたいで良かったよ。
そんなことを思っているうちに、私は本当に疲れていたからこそ、気が付かないうちに眠りについていた。
「…………ん」
そして、どれくらい経ったのかは分からないけど、ゆっくりと目が覚めた。
すると、何故かいつも一人で寝てた時よりも暖かい気がして、直ぐに気がついた。
「……なんで、いる」
ルアが私を抱え込むようにして、私を抱きしめるように一緒に眠っているのに気がついて、思わず私はルアに向かってそう言った。
「…………ルア、起きて」
「……ご主人様? 起きたんですか?」
眠りが浅かったのか、いつもより直ぐにルアは目を覚まして、私にそう聞いてきた。
……あなた、奴隷だよね? しかも私の抱き枕の奴隷。
なのに、これじゃあまるで私の方が抱き枕みたいじゃん。
「……そんなのは、見たら分かる。……それより、なんでいる。……私は一人で寝た、はず」
「はい、服と下着を買って帰ってきたら、ご主人様が眠っていたので、私の役目である抱き枕の仕事をしないと、と思いまして」
それで、私と一緒に寝ていた、と。
……完全にルアが私を抱き枕にしている感じになってたけど、まぁ、ルアは抱きつき癖みたいなのがあるみたいだし、今回は特別に許してあげようか。私の心が広いのはもちろんとして、ルアは自分の仕事を全うしようとしてくれたんだもんね。
……もう一つ理由を上げるとするのなら、一応、私も暖かかったしね。
「……頭、この辺に持ってきて」
自分の役割を理解している奴隷にはちゃんとご褒美をあげないと、と思って、私はそう言った。
普通なら私のご褒美なんかに価値があるのかは分からないけど、ルアはさっき私にご褒美を求めてたし、そもそもの話、奴隷の立場でご主人様にご褒美を貰えるのを喜ばない方がおかしいんだから、もちろん自信を持って。
「こ、これでいい、ですか?」
まだ私もベッドから起きていないし、頭を持ってくるように指定した場所が場所だから、ルアら寝転がりながら、上目遣いになるようにしてそう聞いてきた。
今、ルアは私の胸の目の前くらいに頭を置いて寝転がっている。
……全然関係ないけど、もしも私にルアくらいの胸があればルアの頭が私の胸に当たってたかも。……初めて胸が小さくて良かったと思えたよ。
「……よしよし」
そんなことを思いつつも、今はルアへのご褒美だと思って、私はそう言いながら頭を撫でた。
「ぁ……ご主人様……?」
「……奴隷の立場を理解してるのは、良いこと、だから、ご褒美」
私の言葉を聞いたルアは、奴隷なんだから当然のことだけど、嬉しそうな雰囲気を醸し出して、エルフ特有の少し長い耳を赤くして、ピクピクと動かし始めた。
……なにあれ。動くんだ。
……ちょっと、触ってみよ。私の所有物で奴隷なんだから、いいよね。
「んっ……ご主人様……」
そうして、頭を撫でつつ耳に触れると、なんか、ルアは変な声を出して、私に近づいてこようとしてきた。
いつも抱き枕にしてるし、ただ近づいてくるだけならいいんだけど、今ルアの顔は私の胸の目の前にあるんだから、近づいていいわけないでしょ。
「……ダメ。……それ以上、近づいたら、もう終わり、だから」
「……ぇ?」
当たり前でしょ。なんでびっくりしてるの。
「ご主人様にこんなことをされて、我慢なんて出来ないですよ……」
「……い、今のルアは、抱き枕、だから」
あの時みたいな感覚を感じた私は、反射的に直ぐにそう言った。
抱き枕の時はあの時私が言ってしまった好きにしていい、なんていう命令の効果は無くなるからね。
「んっ……なら、早く抱きしめてください」
すると、ルアは奴隷の癖に一瞬不満そうな顔をしたけど、直ぐにそう言ってきた。
「……もう、撫でないから」
また、き、キスなんてことをされるよりはマシだと思って、私は恥ずかしくて嫌な気持ちを抑えながら、ルアを自分の胸に押し付けるようにして、抱きしめた。
「ご主人様、大好きです」
「ッ……」
……なんで、嫌なはずなのに、不快じゃない……どころか、こんなに幸せ、なの。
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