第18話

「……どう、だった?」


 不動産屋の人に家の中を色々と案内をしてもらった後、私はルアに向かってそう聞いた。

 正直、私はこうやって案内されている間も全く外に人が通る気配を感じられなかったから、結構気に入ってるんだけど、問題はルアだ。

 ルアが居なかったら買わなかった家だし、ルアが気に入らなかったら、また別の家を探すつもりだしね。


「え、えっと、凄くいいところだと思います。で、でも、大丈夫なんですか? 私が決めちゃって。……私、奴隷ですよ?」


 ……だから、なんで変なところで謙虚になろうとするの。

 

「……ここ、買います」


 そう思いつつも、私はルアを無視して、店の人に向かってそう言った。

 私が良いって一度言ってるんだから、良いに決まってるのに、わざわざそんな無駄なことに答える理由なんてないし。


「はい、ありがとうございます。場所が場所ですし、お安くしておきますね」


 まぁ、普通、人がいない所を買おうとする人なんて滅多に居ないと思うしね。

 安くなるのは割と当然かな。


「この場で直ぐにお支払いになりますか?」


「……はい」


 そう言って、値段を聞いてから、私はお金を一括払いで払った。

 すると、いきなりお金が出てきたことにびっくりしつつも、店の人は中身を確認してから直ぐに帰っていった。


「……ふぅ。……じゃあ、ルア、これ」


「え?」


「……これで自分の服と下着を買ってきたらいい。……私は家に家具を置いておくから」


「ひ、一人で、ですか?」


 それは、どっちに対して言ってるの?

 私が一人で家具を置くことについて言っているのか、一人で服と下着を買いに行くことについて言っているのか、ちゃんと言ってもらわないと分からないんだけど。


「……どっちの話?」


「ど、どっちもですよ!」


「……そう。……なら、どっちも大丈夫だから、行くなら早く行ってきたらいい。行かないのなら、今日もルアはあんな格好で過ごすだけ。私はどっちでもいい」


 ルアがどんな格好で過ごそうが別に興味なんて無いし、私はそう言った。

 家具の方だって、アイテムボックスから出すだけなんだから、直ぐに終わるし。

 ……まぁ、今日はもう疲れたから、他の家具は後回しにして、ベッドを出して眠るつもりだけど。

 抱き枕が居なくなっちゃうけど、少しくらいなら大丈夫でしょ。もうかなり寂しいなんて訳の分からない感情は治まってきてるんだから。


「う、うぅ、またあんな格好で過ごすのも嫌ですけど、一人なのも嫌です……」


 めんどくさいな。

 私みたいに人が嫌いな訳じゃないんだから、別にいいでしょ。一体何が不安だっていうの。

 と言うか、私は早く休みたいんだから、行くのか行かないのか、早くしてよ。


「……はぁ。……これ、持って行っていいから」


 そう言って、私は適当な指輪を取り出して、ルアの目にも分かりやすいように付与魔法を掛けた。

 そして、その指輪をルアに渡した。


「ご、ご主人様、これは?」


「……それがあれば安全、だから」


 まぁ、不動産屋の場所を聞きに行くだけならともかく、奴隷の身分で多分だけど遠いところまで買い物に行くのが不安だって気持ちはまぁ分かる。

 だからこそ、わざわざ奴隷にそんなものを渡してあげたんだから。


「……行くなら、早く、行ってきて」


「わ、分かりました! 大事にしますね!」


 そう言って、ルアはお金と私が渡した指輪を大事そうにしながら、去っていった。

 ……あげた覚えは無いんだけど、まぁいいか。

 早くベッドを出して寝よ。

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