第17話
「ここです! ご主人様」
何故かテンションの上がっているルアと手を繋ぎながら、不動産屋へ案内されること数分、不動産屋に着いたみたいで、ルアがそう言ってきた。
「……はぁ」
「ご主人様?」
「……なんでもない。早く、行こう」
私はルアと繋いでいた手を離しながら、そう言った。
「あっ……はい、分かりました」
そして、不動産屋の中に入った。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご要件でしょうか」
すると、何人か待機していた店の人の中から一人が私たちに近づいてきて、そう聞いてきた。
不動産屋なんだから、家を買いに来たに決まってるでしょ。
……家を売るとかもあるのかもだけど。
「……家を、買いに来ました」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
早く終わって欲しい。
そう思いつつ、私は店の人の言葉に従って、店の人の後を追った。
早く終わって欲しいとは思っているけど、適当な家を買ってそれが気に入らなかったら嫌だし、家は真剣に選ばないと。
「家を買いたいとのことでしたが、なにか希望はございますか?」
そして、一つの部屋に案内された私は、店の人との間にテーブルを挟んでルアと一緒に座った。
「……人が、通らないところ」
「……人が通らないところ、ですか? ……それは、確かに無いことはありませんが、日当たりも良くなければ、ギルドや他の店からもかなり遠ざかった物件になってしまいますが、大丈夫でしょうか? もちろん、治安は私たちが保証致しますので、その辺は大丈夫なのですが」
私みたいに人が通らないところの家なんかを買おうとする人なんてなかなか居ないのか、店の人は困惑したようにそう言ってきた。
「……大丈夫、です」
仮に治安が悪かったとしても、私なら結界を張って安全にすることくらい出来るし、同じことを言ってただろうけど、と思いながら、私はそう言った。
「そうですか。でしたら、直ぐに家へとご案内させていただきましょう」
「……お願い、します」
……また人気がある表通りを歩くことになるのか、と思いつつ、私は頷いた。
いくら一秒でも早く人と関わらなくちゃならない時間なんて終わらせたいと思っているんだとしても、場所や内装を知らないまま買っても何の意味も無いし。
「では、早速行きましょうか」
「……はい」
そうして、私たちは不動産屋から外に出て、店の人に案内をされ私が買おうとしている家の前までやってきた。
もちろん、ルアは私の隣に居てもらっている。
……さっきも思ったけど、別に私が不安だから、なんて理由な訳が無い。……単純にルアは奴隷だし、私のものだし、当然のことなだけ。
「中を案内させてもらいますね」
「……ルア、何してる」
嫌だけど、ついて行かない訳にはいかないから、そう言う店の人の後を追おうとしたのだが、何故かルアが立ち止まったまま動かないから、私はそう言った。
……ルアの為に嫌々ながらも不動産屋なんかに足を運んで家を買おうとしてるのに、私一人に行かせようとしてるのなら許さない、という思いを込めながら。
「す、住むのは私とご主人様の二人だけですよね? こんなに大きな家を買うんですか?」
……買おうとしている家の大きさに圧倒されてただけってこと?
……私は一刻も早くこの時間が終わって欲しかったから気にしてなかったけど、そう言われてみれば、家の大きさの希望も出てないのにいきなりこんなところに案内されたのは変……なのかな。
単純に私が言ったような物件で安全なところがここしか無かったから、ここに案内しただけって感じがするし、まぁ、そこはもう気にしないでいいや。
仮になにか思惑があったんだとしても、私、強いし。大丈夫でしょ。
「……ルアが気に入ったら」
とはいえ、ルアが気に入らなければ私が家を買う意味なんて全くないし、私はそう言った。
「えっ?」
「……正直に、言ってね。めんどくさい、から」
「は、はい、わ、分かりました」
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