第15話

「んぅ……ご主人様ぁ……」


 恥ずかしい格好をしたルアを起こしていると、やっと目が覚めたのか、そんな声が聞こえてきた。


「……ルア、起きた?」


 私の言葉に返事は無く、その代わりに抱きついてきている力が強くなった気がした。

 ……これは、どっち? 起きてるけど、まだ寝ぼけてるってことなのかな。

 まぁ、そうだよね。寝ぼけてなかったらこんな格好でくっついてきたりなんてしないよね。

 ……私より大きい胸が直で当たってるし。


「……ルア、起きて」


「…………ご主人様?」


 そして、まだ半開きのルアの目と目が合った。

 

「……ルア、自分の格好、見て」


 昨日と同じ雰囲気を感じた私は、直ぐにルアにそう言った。

 

「……えっ? あっ、み、見ないでください! ご、ご主人様」


 すると、顔を真っ赤にしながらそう言って、ルアは私から離れて体を隠していた。

 ……勝手に離れてるけど、私がまだ寝るって言ってたらどうしてたの。

 いや、もう起きる気だし、いいんだけどさ。


「……別に見たくなんてないし、見ないよ」


 そう言って、私はルアの方を見ないようにしながらベッドから降りて、部屋を出た。


「……うぅ、見られるのは恥ずかしいですけど、それはそれで複雑です」


 何か後ろからルアの声が聞こえてきてたような気がしたけど、それを無視しながら。

 よし、今日は奴隷にいいようにされることもなく無事に起きられたから、気持ちがいい朝だね。

 ……いや、これからのことを思うと憂鬱な朝か。今日はいくらルアに代わってもらうとはいえ、最低限は私も人と関わらなくちゃならない日だろうし。

 

「……はぁ」


 取り敢えず、ルアの着替えを用意してあげようかな。

 あのままじゃ可哀想だし。私も私の所有物が変な目で見られるのは嫌だし。

 

 ……下はスカートじゃない普通のこれでいいでしょ? 後は上だけど……これでいいかな。

 一応、私の持ってる服の中じゃ一番大きいから、これでいいよね。

 

 そして、ちょうど私がルアの服を用意したところで、恥ずかしそうな様子のルアが部屋から出てきた。


「……これ、用意したから」


「は、はい、ありがとうございます、ご主人様」


 着替えをルアに手渡したのだが、何故かルアは着替えようとしなかった。

 

「……なに、してる? 早く着替えて」


 嫌なことは早く終わらせるに限るし、早く家を買いに行きたいのに、ルアがなかなか動き出さないから、痺れを切らした私はルアに対してそう言った。


「え、えっと、へ、部屋に戻って着替えても大丈夫ですか?」


 すると、恥ずかしそうにしながらも私が手渡した服で体を隠すようにして、そう聞いてきた。

 ……あぁ、私の目の前で着替えるのが恥ずかしかったから、中々着替えようとしなかったって事ね。

 どうせ最初に見てるんだから、今更だと思うけど、ルアの羞恥心が強いのは分かってたことか。


「……好きにしたらいい。早くして」


「は、はい。直ぐに着替えてきますね」


「……ん」


 別に私はルアの裸なんて見たい訳じゃないんだし、勝手にしたらいいのに。

 今は抱き枕の時間じゃないんだし、自由にできるだろうし。

 ……ルアの私に許可を求める基準がよく分からないけど、まぁいいや。

 ルアが戻ってきたら直ぐに家を出られるよう、私も準備しておこ。

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