第12話

「あ、ありがとうございます、ご主人様。美味しかったです」


 水分補給を終えたルアは、律儀にも私の元まで戻ってきて、恥ずかしそうにしつつもお礼を言ってきた。

 

「……そう」


 水に美味しいも何も無いと思ったけど、ルアは少し前まで奴隷だったから、自分で言うのもなんだけど、私が出すようなこんな綺麗な水なんて飲ませて貰えてなかったんだろうと考えたら、まぁ、仕方の無いことなのかなと思って、余計なことは言わなかった。


 ……ルアの今の格好は自業自得だし、別にいいんだけど、明日以降もこのままなのは流石にちょっと可哀想かな。

 ……はぁ。仕方ない。どうせ家も買わなきゃなんだし、本当に嫌なんだけど、明日家とルアの服を買いに行こうかな。

 ……あっ、でも、家はともかくとして、家さえ買えば服はルアだけでも買えるんじゃないかな。

 うん。それなら、少しは気が楽になってきたかも。……まぁ、どうせ不動産屋の人とは話さなくちゃならないんだし、嫌な気持ちに変わりはないけどね。


「……ルア」


「は、はい」


「……明日、出かけるから」


 ルアは奴隷なんだし、わざわざ今伝えなくても明日になったら伝えて、無理やり連れて行けばいいだけなんだけど、一応ね。


「え? あっ、はい。分かりました。私は頑張ってお留守番をしておきますね」


「……何、言ってる」


 こんなところどうせ誰も来ないし、来たとしても私の結界で基本的には入れないはずだし、留守番なんて必要ないよ。

 そんなことより、ルアには一緒に来てもらわないと私が困るでしょ。

 ルアを買うだけでもあんなに気分が悪くなったんだから、明日は私の代わりに色々とルアに不動産屋の人と話してもらわないとなんだから。


「……ルアも一緒に、だから」


「わ、私も行くんですか!?」


 私がそう言うと、何故かルアは想像以上に驚いていた。


「……嫌、なの」


 もしも嫌なんて言ったら、許さないけど。

 確かに抱き枕の時以外は好きにしていいとは言ったけど、今回ばかりは無理やりにでも連れていく気だ。

 家を買ってからならもう私が人と関わることなんて無くなるし、本当に好きにしてくれたらいいんだけど、明日は私の代わりに不動産屋の人に対応してもらわなきゃなんだから。

 そもそも、家を買ったら、私は家に行って、ルアには服屋に行ってもらうんだから、やっぱり来てもらわないと困る。


「い、いえ、ご主人様に誘ってもらえることは凄く嬉しいんですけど、こ、この格好で、ですか……?」


 そう思っていると、ルアは更に恥ずかしそうにして、そう聞いてきた。

 ……確かに、奴隷だから別にいいと考えてたけど、よく考えたらその格好で行かせるのは、いくら自業自得の格好とはいえ、少し可哀想かも。

 まぁ、そもそも、私の寝るとき用の服だしね。

 

「……スカートじゃないのは用意するけど、上はどうせ私の服だから、同じ感じになるよ」


「い、嫌ですよ、こんな格好をご主人様以外に見られるのなんて!」


 ……確かに、私も私の所有物の恥ずかしい姿を私以外の人に見られるのはちょっと嫌かも。


「……なるべく大きいのを用意するから」


「は、はい……」


 安心させるようにそう言ってあげたのに、何故かルアの顔は不安そうなままだった。

 ……ご主人様を信用出来ないっていうのか、この子は。

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