第8話
「……出来た、よ」
そう言って、私は自分の分とルアの分の朝食を机の上に置いた。
「ご主人様っ!」
すると、その瞬間、ルアはもう我慢が出来ないとばかりに私に抱きついてきた。
……離れてたのは本の数十分程度のちょっとの間だけでしょ。
なんでルアはこんな感動の再会、みたいな雰囲気を出して私に抱きついてきてるの。
別にルアがこんな幸せそうな顔をできるのも今だけだし、いいんだけどさ。
「……食べるんだから、離れて」
「このままでも食べれますよ?」
「……食べにくい、でしょ」
そもそも、ルアの分の朝食は私の対面に置いてあるんだから、普通に考えて、くっつかないにしろ、隣同士で食べることなんて想定してないんだよ
「大丈夫です」
「……私が大丈夫じゃない。早く、あっち行って」
私の対面に置かれたルアの分の料理……料理? を見ながら、私はそう言った。
焼いただけだから料理とは言いにくいかもだけど、別に美味しいんだし何でもいいよね。
「ついさっきもまた抱き枕の時以外は好きにしていいってご主人様が言ってくれたんですよ? それに、私はちゃんと後で抱きつきますって言ってましたよ?」
「……それは、食べてから、でしょ」
「食べてからならいいんですか?」
「…………ダメ」
確かに、後で抱きつくとは言っていたけど、普通、朝食を食べてから抱きついてくると思うでしょ。
実際、私は朝食を食べてから抱きついてくると思ってたし、どうせダメだって命令しても意味が無いんだから、諦めてるってだけで好きでルアに抱きついて欲しい訳では無いんだよ。
「さっきは良いって言ってくれたじゃないですか」
「……そんなこと、言ってない、でしょ」
と言うか、どうせ私が許可なんて出さなくても勝手に抱きついてくるんだし、わざわざそんなこと聞かなくてもいいでしょ。
「……冷めるから、ほんとにあっち、行って」
「……分かりました」
私が本気で言っているって理解してくれたのか、ルアは一言そう言って私の対面に移動してくれた。
「……どうせ、私の好きにしていいって命令がある以上、そのことに関しては何も命令出来ないんだから、勝手に好きにしたらいいでしょ」
「それはそうですけど、ご主人様が素直になった方が私もご主人様ももっと幸せになります」
「……意味、分かんない。私はずっと素直」
そう言って、私はもう訳の分からないことを言ってくるルアなんて放って、朝食を食べ始めた。
ルアが離れてくれてるし、もう食べない理由が無いから。
すると、私が朝食を食べ始めたのを確認したルアは、何かを言いたそうにしつつも、私に合わせて朝食を食べ始めた。
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