第7話
もう抱きついてきている奴隷なんて放っておいて、私は今更だけど朝食を用意することにした。
……朝はルアのせいで色々あって、朝食を食べることすら忘れてたし、そのことに気がついたらお腹が空いてきたんだよ。
まぁ、朝食を用意すると言っても、私は料理なんて出来ないし、その辺で取ったお肉やその辺で取った野菜? やキノコだったりを焼くだけなんだけどさ。
……いや、キノコはやめておいた方がいいかな。今日はルアも食べるだろうし。
私、あのキノコに絶対に毒が無いなんて言いきれないんだよね。
私自身が毒なんて効かないからこそ、初めて見つけた時に「まぁ毒があっても別にいいか」みたいな感じで食べ始めて、美味しかったから今も食べてるだけで毒があるか無いかは全く調べてないし、未だに分かってないんだよ。
味はルアも気に入ってくれると思うんだけどね。
危険な森の奥地ってこともあってか、魔力をいっぱい含んでいて、どの食材も味が上質になってるからね。焼くだけでも割と美味しいんだよ。
「ご主人様、なんですか? これ」
「…………朝食」
抱きついてきている奴隷なんて放っておくとは言ったけど、当然のような顔をして抱きついてきながらそんなことを聞いてくる奴隷に少し思うところがありつつも、私はそう言った。
「……ルアも食べる、でしょ?」
「い、いいんですか?」
なんでこの子は今更遠慮したような感じを出してるの。
あなたはご主人様にあんなことをするような奴隷なんだから、そんな遠慮した感じなんて出さなくていいでしょ。
……まぁ、もしも今ルアが遠慮してたら遠慮してたで奴隷のくせに遠慮って言葉はないの? なんて思ってたと思うけど。仮にそんな感じだったとしても、ちゃんと食べさせてはいたけどさ。
いくら私を舐めているとはいえ、何も食べさせないのは可哀想だし。
……こんな考えだから、舐められてるのかな。
「……ん、別にいい」
「あ、ありがとうございます! ご主人様」
「……ん、少しは私に敬意を持った?」
「? 私は最初からずっとご主人様をお慕いしていますよ?」
仮にルアが私を慕ってたら、いきなり押し倒したり、き、キスなんかしたりしないでしょ。
……思い出したら、また顔が熱くなってきたし。
もう考えないようにしよ。
「…………一応、火を使って危ないから、そろそろ離して」
「……分かりました」
私の言葉を聞いたルアは渋々といった感じで離してくれた。
……奴隷のくせに、なんでそんな渋々なの。ご主人様の命令なのに。
もう今更だし、いいけど。
「また後で、抱きついてもいいですか?」
「……ダメに決まってるでしょ」
「そう、ですか……」
私がそう言うと、ルアは悲しそうな顔をして、俯いてしまった。
「…………ただ、どうせ命令しても意味無いんだし、好きにしたらいい、よ」
「ほ、本当ですか!?」
「…………ほんとも何も無い。最初に言った通り、抱き枕の時以外は好きにしたらいい」
どうせ後でルアは死ぬほど恥ずかしい思いをすることになるんだから、私はそう言ってあげた。
すると、ルアはさっきまでの悲しそうな顔が全部嘘だったかのように笑顔になった。
別にルアの悲しそうな顔を見るのが嫌だった訳では無い。ただ、奴隷があんな顔をしてたら、辛気臭くなるし、嫌だっただけだ。
それ以上でも、以下でもない。
奴隷のことなんてどうでもいいし。
「えへへ、ご主人様、大好きです」
そう思っていると、ルアはそう言って、せっかく離れてくれていたのに、また私に抱きついてきた。
「ッ……火、使うって言った。早く、離れて」
「はい! また後で抱きつきますね!」
「……」
私はそんなことを言いながら嬉しそうにしているルアを放って、朝食の準備を始めた。
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