第6話
頭や体を洗い終えて、ゆっくりと湯船に浸かっていると、私はあることを思い出した。
色々あって忘れてたけど、そういえばあの子、今下着を履いてないんだよね。
昨日、私が用意しなかったから。
……別に悪意があって用意しなかった訳じゃなくて、ルアに履かせるような下着が無かったからなんだけど、今考えれば、自業自得だ。
私にいきなりあんなことをして、奴隷のくせに私を辱めてきたんだから。
私がお風呂を上がったら、当然氷は溶かすし、ルアがお風呂に入る時、今日は私がいつも寝る時に履いているハーフパンツじゃなくて、スカートでも用意してやろうかな。
全然履いたことなんて無いけど、一応、持ってるし。
下着が無い状態でスカートなんて、私なら絶対に耐えられないけど、今日の仕返しなんだ。
決めた。絶対今日はルアの着替えとしてスカートを置いておいてやる。
もちろん、私の下着を履かせる気なんて無いから、昨日同様下着無しで。
「……ふふっ」
少し性格が悪いかもだけど、ただでさえ昨日ルアは下着が無いことを恥ずかしそうにしてたのに、その状況でスカートなんか履かされたら、どれだけ恥ずかしそうな顔をするか想像するだけで少し笑いが込み上げてしまった。
まぁ、私だってルアが私に何もしてきてなかったらこんな意地の悪いことなんてしてないし、これくらいいいよね。
「…………そろそろ、上がろ」
そんなことを思いながらも、かなり体も温まってきて、これ以上はのぼせそうだったから、私は呟くようにそう言って、お風呂から出た。
そして、体と頭を拭いて、服をちゃんと着てから、氷を溶かした。
「ご主人様!」
すると、その瞬間、私がお風呂に入ってる間ずっと氷の前で私のことを待っていたのか、ルアが私に抱きついてきた。
咄嗟のことすぎて避けることも出来なかったし。
……と言うか、こんなことをして、ルアは私のことを怖いとか思ってないのかな。
さっき見せたように、ルアのことだってやろうと思えば一瞬で氷漬けにすることくらいできるのに。
「……なんの真似? 早く、離して。まだ抱き枕の時間じゃないから」
そう思いつつも、私は自分にどうでもいいと言い聞かせて、そう言った。
実際、ルアに……奴隷にどう思われようが別にどうでもいいし。
「嫌です。今ご主人様のことを離したら、また氷か何かでご主人様に近づけなくさせられてしまうので」
「……さっきも言った。……まだ抱き枕の時間じゃないんだから、近づかなくてもいい」
「ダメです。私が近づきたいんですから。……抱き枕の時間以外は好きにしていいって言ったのはご主人様なんですからね?」
「……私のことを好きにしていいなんて言った覚えは無い」
と言うか、普通に考えて、ご主人様が奴隷に向かって自分のことを好きにしていいなんて言うわけないでしょ。
「好きにしていいって言われたんですから、同じようなものですよ」
「……そんなわけない、でしょ」
どんな暴論なの。
「ご主人様、いい匂いです」
私がルアの言動に呆れていると、そんなことを言ってきた。
「……同じでしょ」
ルアだって私と同じ石鹸を使ってるんだから。
……まぁ、私は今お風呂に入ったばかりだし、私の匂いの方が強いのかもだけどさ。
てか、今更だけど、何勝手に私の匂いを嗅いでるの。お風呂に入ったばかりだから良かったけど、それ以外なら普通に怒ってたからね。
「同じじゃありません。ご主人様の匂いの方が良いですし、私も幸せです」
……買う奴隷、間違えたかな。
いや、ルア以外は皆覇気が無かったし、選択肢はなかったか。
「……もういいから、ルアもお風呂入ってきたら」
そんなことを思いながらも、私はそう言った。
早く今日の朝の仕返しをしたいって理由と、私を舐めたことを早く後悔させてあげたいから。
「ありがとうございます。でも、まだ大丈夫です。今はご主人様にこうやってくっついておきたいので」
「……そう」
……普通、奴隷がこんなことを言われたら喜んでお風呂に入りに行くでしょ。
自分で言うのもなんだけど、私はこれでも良いご主人様なんだよ? 普通は奴隷をお風呂に入れたりしないからね? ……根本的にあるものが汚い格好で家を彷徨かれたくないって理由だとしても、いい方なんだからね?
この子はそこのところ、ちゃんと分かってるのかな。
……まぁいいや。
どうせ数分後には顔を真っ赤にして恥ずかしがってるんだし、私の寛大な心で許してあげるよ。
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