第4話
「ぇ、ぁ?」
ルアが私を傷つけようとして、死ぬ。
そうなる。絶対にそうなると思っていたのに、何故かルアは私を押し倒したまま顔を赤らめている。
理由は分かりきってる。……ルアが私にキスをしたからだ。
……意味が分からないし、理解ができない。
ルアが私にキスをした理由もそうだし、いきなりキスをされて、私が嫌悪感を感じていない理由も理解ができない。
「……ご主人様、もう一回、しますね」
私が内心で色々と理解出来ずに困惑していると、突然そんなルアの言葉が聞こえてきた。
「……ぇ」
私が何か言葉を返すより先に、ルアは私の唇をキスをして塞いできた。
「んっ……」
「ご主人様、可愛いです」
上から私の目を覗き込むようにして、ルアは顔を赤くしたままそう言ってきた。
……そんなこと、初めて言われた。……違う。今はそうじゃなくて、ルアを退かさないと。
「……意味、分かんない。……それより、なんの、真似?」
「何がですか?」
「……私に、き、キス、した」
「ご主人様が抱き枕になる時以外は好きにしていいって言ったんですよ?」
……つまり、私が好きにしていいって言ったから、私を押し倒して、キスをした、ってこと? ……確かに、好きにしていいとは言ったけど、私を好きにしていいわけ無くない? 私、ご主人様だよ?
「……取り敢えず、退いて」
そう思いつつも、私の説明不足もあったかな、と無理やり自分を納得させて、私はそう言った。
取り敢えず、またキスをされる前にルアを退かそうと思って。
「まだ嫌ですけど」
……奴隷に拒否権なんてあるわけないでしょ。
「……命令、だから」
「嫌です」
「…………なんで?」
「ご主人様が言ったんですよ? 好きにしていいって」
違う。そうじゃない。
なんで、ちゃんと命令をしてるのに、奴隷が命令を拒否できるの?
「……違う。なんで、拒否、できる?」
私は素直にそう聞いた。
それが分からないと、これからの命令も意味をなさない可能性があるから。
「……ご主人様、もしかして知らないんですか?」
「……何が?」
「私、犯罪奴隷じゃないんですよ?」
「……そんなの、知ってる。……だから、なに」
ルアが何を言いたいのかが分からない。
と言うか、早くそこを退いて欲しい。
「えっと、ご主人様、かなり前に奴隷の制度は少し変わって、犯罪奴隷じゃない普通の奴隷への命令は上書き出来なくなったんですよ? ……もしかして、知らなかったんですか?」
何、それ……そんなの、知らない。
……もしかして、そんな制度が出来たから、ルアは昨日念を押すように好きにしていいって言葉が命令なのかを聞いてきてたの?
「…………知らなかった」
「本当に知らなかったんですか……」
ルアは驚いたように、そう言ってきた。
……奴隷の制度が変わるなんて、分かるわけないし。
「可愛いですね。ご主人様」
「ッ……なに、言ってる。……どうでもいいから、早く、退いて」
「嫌です」
命令……は出来ないんだもんね。
……魔法を使って無理やり退かそうかな。
……そうすれば、退かせるには退かせるけど、ルアが怪我をするかもしれない。
奴隷のくせに私の命令を聞かなかったんだから、怪我くらいしても自業自得だと思うけど、それと同時に奴隷の制度が変わったことを知らなかった私も悪いと思うし、怪我をさせるのはちょっと悪い。
「んにやっ」
そう思っていると、急に下の適当に着ていたハーフパンツの方に手を伸ばされて、変な声が出てしまった。
……奴隷にこんな恥ずかしい声を出させられたことを屈辱に感じると同時に、私はルアにもう一度なんの真似かを聞いた。
「ご主人様が知らなかったんだとしても、私は好きにしていいと言ってもらっているんですから、好きにするために、服を脱がせるんですよ」
服を……脱がせる……?
「ひやっ、る、ルアー、だ、ダメ。そ、れは、ほんとに、お、こる、よ」
……確かに、さっきキスをされた時は何故か嫌悪感を感じなかったけど、服を脱がせるのなんて、ダメに決まってる。
……なんでかは分からないけど、いきなり服を脱がせようとしてきているルアに対して未だに嫌悪感を抱いてはいないけど、ダメなものはダメだ。
仮にルアが奴隷じゃなかったとしても嫌なのに、なんで私が奴隷に服を脱がされて辱められなくちゃならないのか、意味が分からないし。
「ご主人様、もしかして、ほんとに嫌ですか?」
「……あ、あたりまえ」
「……でも、さっきキスをした時はご主人様、幸せそうでしたよ?」
「……そんなわけない、でしょ」
確かに嫌悪感は感じなかったけど、奴隷にキスをされて喜びなんて感じるわけが無い。
「ご主人様、自分で分かってないんですか?」
「……いい加減にしないと、怒るよ。……ほんとに、もう、退いて」
「……分かりました。服を脱がされるのは本当に嫌そうですし、取り敢えず今はやめておきます」
そう言って、ルアは退いてくれた。
……絶対、今日の夜は今の仕返しに私がルアを辱めてやる。
いくら私が奴隷の制度を知らなくて、上書きできない命令をしてしまったとはいえ、やっていい事と悪いことがあるもん。
そう思いつつ、私はルアを部屋に置いて、さっさと部屋を出た。
……顔が熱くて仕方ない。……絶対、ルアに対して怒ってるからだ。それ以外に考えられない。
……外に出て、頭を冷やそう。……今はルアに会いたくないし、ちょうどいい。
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