第2話
奴隷との契約が終わった。
「またのお越しをお待ちしております」
案内をしてくれていた店の人のそんな言葉を背に、私は買った奴隷を連れて早歩きで人気のないところに向かっていた。
……本当ならこの後は家を買いに行く予定だったんだけど、そんな余裕なんて今の私には無い。
もう私は限界を迎えているからだ。
家を買うのは明日……明後日……7日後とかにして、もう今日は家に帰ろう。
「……こっち、来て」
「は、はい」
やっぱり、奴隷で私の所有物だって意識を強くしてるからか、鳥肌は立たない。
触ったらどうなるかはまだ分からないけど、今は取り敢えず早く家に帰りたい。
さっき買ったばかりの奴隷エルフが近づいてきたのを確認した私は、すぐに転移を使って、家に帰った。
「えっ、あ、あの……」
何か奴隷の子が言っているような気がするけど、今は早く精神を安定させるために休みたい。
あー、でも、せめてこの子をお風呂に入れさせた方がいいか。服も汚いし、着替えさせたい。
あんな服で私の家をうろつかれても困るし。
「……来て」
「わ、分かりました」
私の少ない言葉でもちゃんと私の奴隷が付いてきてくれていることを確認した私は、お風呂場までやってきた。
「服、脱いで」
そして、一言そう言った。
すると、何故か奴隷は顔を赤くして狼狽え出した。
「……早く」
私は思わず、眉をひそめながら中々服を脱がない奴隷を急かした。
私だったら嫌だけど、あなたは奴隷で私の所有物になったんだし、変な羞恥心なんて感じてないで早く脱いで欲しい。
どうせ女の子同士なんだから、別にいいでしょ。……もう一度言うと、私は絶対嫌だけど。
「は、はい……」
そう思っていると、ゆっくりとではあるけど、恥ずかしそうに脱いでくれた。
そして、全部脱いだ私の奴隷は私の前で大事な部分を手で隠して、次の私の命令を待っていた。
別に見たいわけじゃないし、隠すくらいはいいんだけど、胸が私より大きい。
私が小さい方だから、割と普通のことではあるんだけど、スレンダーな体型が多いエルフに負ける私って……いや、別に誰かに見せる予定なんてないし、いいんだけど。
「……お湯、貯めてあるから、あっちの石鹸で頭と体を洗って。……頭も体も洗えるやつだから」
「い、いいんですか? 私、奴隷なのに……」
「……別にいい。……だから、早くして。……あなたに綺麗になってもらわないと、買った意味が無いし」
抱き枕として買ったんだから、汚いままでいて欲しいわけないし。
「は、はい。あ、ありがとうございます!」
「…………ん」
……久しぶりにお礼なんて言われた。……別にどうでもいいけど。
それより、早くお風呂場を出てあげよう。まだ恥ずかしそうにして、私から体を隠してるし。
「……着替え、置いとくから」
私の所有物なんだし、別に私の服を着てもらっても問題なんて無いんだけど、胸が大丈夫かな。
……まぁ、大丈夫か。後の問題は下着だよね。
……いくら私の所有物でも私の下着は履かせられないから、下着無しでいいかな。
別に下着無しでも上と下さえ置いておけば大丈夫だよね。
うん。これでいいや。
服を用意した私は、もうやることは終わったとばかりにベッドに行きたい気持ちを抑えつつソファでくつろいで私の奴隷が戻ってくるのを待っていた。
すると、少しして、お風呂から上がった私の奴隷がまだ顔を赤くしたまま、私の元に戻ってきた。
……胸と服のサイズが合ってないからか、かなり胸が強調されている。
……私だったらあんな格好で過ごすなんて絶対無理だけど、奴隷だし、私の所有物だし、別にいいか。
「も、戻りました」
「……こっち、来て」
恥ずかしそうにしている様子を無視して、私は奴隷を自分の目の前に立たせた。
「……ふぅ」
そして、一度深呼吸をしてから、ゆっくりと奴隷の手に触れた。
……よし、大丈夫。所有物って意識を強くしたおかげで、何も感じない。……いや、何も感じないどころか、少しだけ人肌に触れたことに安心してる私がいる。
「ご、ご主人様?」
手に触れられたことに安心して、手をぷにぷにと触っていると、何故かさっきより顔を赤らめている様子の奴隷の声が聞こえてきた。
……触れることも分かったし、そろそろ、名前を聞いておこうかな。
「……名前」
「え?」
「……名前、何?」
「私の、ですか?」
「……そう」
以外に誰がいるの。
「る、ルアーです」
「……ルアでいい?」
「は、はい! 大丈夫です」
よし、上手く名前を聞き出せた。……名前を聞いたあとも手を握っても大丈夫なのも確認できた。
後は私の奴隷……ルアに自分の役割を説明してあげよう。
「……私があなた……ルアを買った理由、説明する」
「は、はい」
「……抱き枕にする、ため」
「わ、私を、ですか?」
「……そう」
……奴隷の身分とはいえ、抱き枕のために買われたなんて聞かされて、ショックなのかな。
……まぁ、別にいいや。奴隷の人生なんてまだ抱き枕として買われた方が幸せな方だと思うし、私が気にするような事じゃないと思うし。
「……それで、抱き枕になって欲しいのは、寝る時だけ、だから。……それ以外の時は、好きにしていい、から。……今度、家も買うから、街にも自由に行っていい……から」
「い、いいんですか? す、好きにして」
「……ん」
「……それは、命令、ですか?」
「? 当たり前」
なんでそんな分かりきった質問をするんだろう。
……どうでもいいや。今は早く休みたい。
「ベッド、来て。早速、仕事」
「は、はい! 分かりました!」
……無理やりにでもテンションを上げさせて、現実逃避でもしてるのかな。
そんなことを思いつつも、私はルアを連れて自室に向かった。
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