第14話・ニューラゲーム
「ちっがあああああああああああああう! こうじゃないだろ! 僕とあのレイドボスの決着はこうじゃないだろ!!」
レンはサーディルの街で復活するや否や往来にもかかわらず叫んだ。当然周囲からは奇異な目を向けられる。
ところで、否である……。
スノウ:いや、これ以上ないくらいにレンっぽいけど
朝神:笑いの神に愛されてるなぁさすが芸人
ニューラゲーム:すべて物理演算の結果ですのでたまたまとしか……
†黒酢†:いや、これでこそレンなんですよ>運営さん
そう、これこそ最もレンらしい決着だったのだ。確かにレンは上手いそのプレイ技術は他の追随を許さない。だが、笑いの神からの寵愛も他の追随を許さないのである。
「だって! あんなに楽しかったんだよ! あんなに死力を尽くした戦いだったんだよ!」
そんなときにこそ、笑いの神は微笑むのである。
おるとロス:ぶっちゃけ最後の瞬間までは本気で上手かったけどなぁ……
アルバこぁ:普通あの状況で二人を完全に逃がすのは離れ業だから……
しかし降臨した笑いの神に負けてレンはここにいる。そう、笑いの神とは意地悪なものである。
「上手かったでしょ!? 僕頑張ったよね!?」
スノウ:実際頑張ってたしめちゃくちゃ上手かった
ニューラゲーム:想定外レベルのプレイスキルでした
実際開発陣は、レンのプレイスキルを見てAIを修正したほどである。
そもそもレイドボスは蘇生アイテム前提に設計されている。だから理不尽な攻撃力を持っているし、HPも膨大だ。それに対して蘇生アイテムなし、事前準備なしであれだけ粘れるのはレンくらいのものである。
「はぁ~、萎えちゃったなぁ。プレイ時間もいい感じだし今日はそろそろおわろうかなぁ……。エビるさんとかエルザさんにも連絡入れないと……」
そう言いながらレンはシステムウィンドウを開きメールを送る準備をする。基本的にウニーカ・レーテは一度一緒に遊んだ相手のログが残り、そのログをたどってメールを送ることが可能だ。
すると、それを聞いたニューラゲームは急いでコメントを書き込んだ。
ニューラゲーム:ログアウトしたらメールを必ずチェックしてください。
ウニーカ・レーテは基本無料で遊べるゲームである。だがアカウントを必要として、そのアカウント登録にはメールアドレスが必要だ。ニューラゲームはそれを把握していて、プレイヤーに有利になる情報は積極的にメールを配信をする。
「あ、はい……なんだろう怖いなぁ……」
とレンが言ったことをきっかけにフォローに入るニューラゲームであった。
ニューラゲーム:メールの内容は簡単に言ってしまえばプロゲーマーへのお誘いです。ウニーカ・レーテのプロゲーマー第一号として報酬は少ないですが契約を結ばせていただきたいという内容です。
「そうなんですか!? すっごい光栄ですよ!」
レンは子供部屋おじさんであった。いや、外見的には男児……いや女児であることから、子供部屋女児さんとでも言うべきだろうか……。
ともかくレンはそんなやり取りをしながらメールを打っていた。今のレンの心境は早くログアウトしたい一心だ。なにせ大好きなゲームがこれから仕事になるのだから……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
レンはログアウトするや否やパソコンのモニターを確認する。するとそこには確かにメールが一通届いていたのであった。
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株式会社ニューラゲーム
題名:プロゲーマー契約のお誘い
レン様、平素より大変お世話になっております。ニューラゲーム株式会社代表取締役
本日一回分の配信を拝見いたしました。非常に高いプレイヤースキルとそのスキルを他のプレイヤーにも共有していただく配信スタイル。非常に今後のご活躍を楽しみにしております。
そこで、弊社ニューラゲームと契約を締結し。ウニーカ・レーテを広く宣伝していただく目的で配信活動を続けて貰えればと思います。
弊社はプロゲーマー様との契約が初めてとなりましてノウハウがないのですが、年俸500万円からの契約で、ご自宅でこれまで通りゲーム配信を続けていただくだけで結構です。色よい返事をお待ちしております。
ニューラゲーム株式会社代表取締役
――――――――――――
メールの内容は以上であり、異常だった。ニューラゲームはとにかくレンという広告塔が欲しくてたまらなかったのである。
レンのストリーミングは初日から同時接続が3000人を超えていた。それはβ版一位の実績が故だ。しかし、これからもっと増えるだろうと予測している。
なぜなら、動画の面白い場面だけを編集した、所謂切り抜き動画適性の高いシーンが初日からてんこ盛りだったからだ。
主に死亡シーンだ。レンの死に方はとにかく面白い。1日分で撮れ高は十分である。
「し、仕事が決まるッ……」
レンは子供部屋女児さんを卒業しようとしていた。そう、これからはプロゲーマーレンの時代がやってくるのである。
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