第6話・本当の実力
そんな不憫なレンであるが実際は最強も最強のプレイヤーである。
もう一度亡霊騎士の前に立ち今度は前方から近づけたことで視認された状態から始められた。
「まだ解説したいことがあったからちょうどいいっちゃちょうどいいか……」
前方からは亡霊騎士が突進と同時に剣を構えてきている。しかも都合よくレア型が突きのモーションを放っている。
朝神:突きどうやって素手でパリィするのさ! シンプルに無茶だよ!
エビる:いや素手パリィのタイミングは二回用意されてる。どっちも1Fだけど。
そうたった1ミリ秒。レンはそんなタイミングに反応できるわけではない。それでもそれで十分なのだ。
「脳が追いつかないなら意思を先行入力すればいい」
亡霊騎士の突きはレンの服を風で僅かになびかせていた。
スノウ:な!?
次の瞬間、レンはその腕を払い。抱き合うようにしてレイピアを亡霊騎士の鎧の隙間に突き込んでいた。そう、こんなことはレンにとって当たり前なのだ。
鳥が来る日も来る日も羽ばたいて空の掴み方を覚えるように、レンは来る日も来る日も刺し違えてはその一瞬を覚え込んだ。
この世界で実現可能なことは理論上だろうがなんだろうが、自分の技術にした。
「素手パリィには敏捷15が最低限必要だと思ってる。誰かそれ以下で出来た人いる?」
その一撃はカウンターかつ、致命の一撃であり、レイピアが実現可能な最大の威力だった。
エビる:無理。亡霊騎士の素手パリィに俺は敏捷27は欲しい。
エビる、彼もまた化物の類であった。とにかく知識量が豊富で、モンスターの行動を予測レベルで言い当てる鬼神である。
おるとロス:こんなこったろうとは思ったけど、この配信は強い人が更に強くなるために見てるなぁ……。スノウさんもパリィの瞬間反応してたし……。
そう、トッププレイヤーの放送とはそうなのだ。彼の動きを参考にできるのはそのすぐ下の実力層。頂点のプレイを参考に出来るのは最前線で戦うガチ勢たちだけなのである。
「15以下でパリィ狙うとどうしても僕もキャラクターのスピードが足りなくなる。ほかはいいとして突きが素手パリィできない。どうせこのあと敏捷も上げていくからここで15にしておくってチャートにちゃーんとかいておいたんだ」
チャートにちゃーんと。昔のRTAからの伝統的ギャグである。本気で笑う人こそいないものの言わねばゲーマーではないとすら言えるほどトッププレイヤーには浸透していた。
そう言いながらもレンはその間にも爆発的なレベルアップをしていた。
そりゃそうである。サーディルはレベル8が来る場所ではない。よってレンはレベルが一気に5つも上がったのだ。取得ボーナスは20。
†黒酢†:そういえばこのゲームって16が一つの節目になってるよね
ガメオベラ:確かに。
「そうそう。だからとりあえず筋力16にしてあと5ポイントあまりなんだけど、実はパリィは敏捷15より16が慣れてるから16にして……こんな感じ?」
そのレベルアップでレンは既に大鎌を最低限扱えるステータスを手に入れていた。だが、目指すのは当面のメインウェポンの大鎌。まだ足りなかった。
――――――――――――
Lv13
生命力1(推奨10) HP30/30
集中力2 MP60/60
体力3 スタミナ90/90
筋力16
技量16
敏捷16
知力1
耐久1(推奨16)
※取得推奨スキル:リープⅠ(ユニーク)【消費MP5】
――――――――――――――
どう見ても前衛のステータスではないのだがこれで前衛が張れるのがトッププレイヤーの異常性。
そして、ウニーカ・レーテの面白さは容赦なくレンに牙を剥く。それがユニークスキルである。
ウニーカ・レーテではスキル構成は大抵ユニークスキルで全てのプレイヤーが埋まる。それは全てプレイヤーに合わせてAIがスキルを作っているからだ。
「くぅー、生命と耐久の推奨は無視だけどリープは取得しちゃおう!」
レンはそれを楽しんでいた。
自分だけの最強ビルド、それを見つけるのがこのウニーカ・レーテの楽しみだ。細かいプレイ技術は真似する人がいてもそれに要求されるステータスは一人一人違う。
スノウ:あーこの人事故以外で攻撃喰らわないから……
アルバこぁ:ここでAIの推奨生命と耐久無視するあたりがトップだなぁ……
ニューラゲーム:すみませんAIはレベル8オールボーナスでのサーディル到達を想定していないため、ポイント不足ですね……
朝神:いやシンプルな無茶をこの人が通してるだけ……
AIのステータス提案や、スキル提案はLV10から始まる。それまでのプレイ記録を元に……。
「いやいや本当に、ウニーカ・レーテのビルド提案AIは優秀ですよ。このAIと相談しつつ最強ビルド組む感じが最高に初心者さんにも優しいと思いますし……」
そう、AIによるスキル提案は何も上位プレイヤーだけを意識したものではない。それこそ初心者ですら、自分のビルドに迷わなくて済むのだ。
ただ、上位プレイヤーの後追いビルドがうまく機能しないことがこのゲームの唯一の欠点と言っていいだろう……。
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