高校生、通学の朝



——今でもあの時の事は夢のような時間だったのではないかと思う時がある。まさかアレとの出会いが一瞬で全てを変えてしまったのだから。———








『君と命を共有している』




 小さな超生物は俺にそう言った。



 これとの出会いが俺の日常を一変させていく。



『君にはやってほしいことがあるんだ』



 俺はこれと一緒にやらなければならないことができてしまったが、

これがとんでもないことだったんだ…。




 どうしてこうなったのかは少し前のこと。











「優作、起きて! もう家を出る時間よ!」



 毎日、毎朝聞く声で目を開けた。時計を見ると、たしかに出発をする時間を指していた。



「やばい!」


  ベッドから飛び出し、パジャマを脱ぎ、ワイシャツに袖を通してズボンを穿き、ベルトを締めてジャケットを羽織る。




 スクールバッグを左肩に掛け(ネクタイは歩きながら締めよう)、二階にある自室のドアを右手で開け、飛び出し、勢いで階段を下る。一階からはコーヒーの香りが立ち込め、二階での慌ただしい時間が嘘のように感じられたが、息をついたも束の間、




「ほら、急いで! もう外で待ってるから。これ、おにぎり! 食べながら行きなさい」



お母さんの声に現実に連れ戻され、小さなおにぎりを手渡され、それを一口で頬張る。



「サンキュー! じゃ、行ってきます」



「気を付けてな〜」



 ダイニングテーブルで優雅にコーヒーを飲み、テレビのニュースを見ていたお父さんが言った。



「はーい」



 玄関でローファーを履き、ドアを開けると、そこに同じ高校の制服を着た者が立っていた。しかし制服は女子生徒の制服で、ズボンでなく、スカートであったが。



 穏やかな少し高めの声で挨拶された。



「おはよう。ユーちゃん」



先程から優作やユーちゃんと呼ばれる人物がこの俺、苗字は藤山で、藤山優作である。母親の名は涼子、父親の名は健一で三人親子の家族である。ちなみに俺は高校一年生。


 そして先程俺をユーちゃんと呼んだ女の子は杉並サエという名前である。



「すごい寝癖」



玄関から出てきた俺に挨拶をした後、頭を見ながら言った。



「起きたばっかだもん」



「モテないよ、だらしないと」



「別に、気にしないよ」




俺はネクタイを締めながらそう言う。そう言いながらもピョンとはねた髪の毛を抑える。




「小学生の時から変わらなくて、ユーちゃんらしいけど。小学生の時までだよ、そんな頭が許されるのは」



「サアもそうでしょ。髪型は変わらずショートカットのボブスタイルで、サッカーをやってるの」



「いやいや、私、寝癖は直すし」



毎朝俺たちはそんな他愛もない話をしながら駅まで歩き、電車に乗って二駅の高校へ向かっている。ちなみに俺たちは小学生前からの知り合いでお互いをあだ名で呼び合う仲である。中学は別の中学に通っていたが、高校はまた同じ学校へ通うことになって今に至る。俺としては気心が知れているため一緒にいて楽だ。



「だって髪長いとサッカーやるときに邪魔だもん。それとユーちゃんの寝癖は全然意味が違うでしょ」



「俺もスポーツなんか始めようかな」



  手櫛で髪を梳かしながら呟いた。










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